南野の“後継者”、踏み出した一歩と悔しさ ザルツブルク奥川雅也の“背中を追う”挑戦

リバプールへ加入したMF南野と後継者と期待されるザルツブルクMF奥川【写真:Getty Images】
リバプールへ加入したMF南野と後継者と期待されるザルツブルクMF奥川【写真:Getty Images】

【オーストリア発コラム】こんなはずでは…ベンチから眺めたELフランクフルトとの第2戦

 ザルツブルクで日本代表MF南野拓実(現リバプール)が去った後、その後継者として期待されているのがMF奥川雅也だ。

 UEFAヨーロッパリーグ(EL)ラウンド32のフランクフルトとの第1戦(1-4)では、トップ下でスタメン出場。南野がプレーしていたポジションだ。中盤でパスを効果的に引き出し、攻撃のリズムを作り出し、相手の守備を揺さぶる変化をつけていくことが求められる。そして守備でも、プレスで相手の攻撃を限定していく大事な役割を担う。

 残念ながら、この試合では期待通りのプレーを見せることができなかった。立ち上がりこそ、ザルツブルクはリズムをつかみかけていたが、フランクフルトの鎌田大地の一撃で一気に流れを相手に持っていかれてしまう。ボールを引き出そうと奥川は懸命に動いたが、対峙するのは老練な元日本代表MF長谷部誠。攻撃側の狙いを読まれては、常にボールへのアプローチで先手を取られてしまう。何度かペナルティーエリア付近でボールを持つ場面があったが、シュートにつながるシーンを演出することはできず、ハーフタイムでベンチへ下がった。そして2-2の引き分けに終わった第2戦では、出番がないままフランクフルトの勝ち残りをベンチから眺めていた。

 こんなはずじゃなかった――そう嘆いていたのだろうか。何もできなかった――そう打ちひしがれていたのだろうか。だが、これは誰もが通る道なのだ。南野だって、最初はそうだった。

 2015年2月のビジャレアル戦、南野がザルツブルクに移籍して1カ月後に開催されたELラウンド32の第2戦。この試合でスタメン出場した南野は、前半だけで交代となっていた。

 当時の取材メモがある。

「積極的に動きまわり、守備にも懸命に走るが、相手にかわされる場面が目立った。攻撃では狭いスペースに顔を出してパスを要求。そこへボールが出てくるのはいいが、そこからコントロールしてチャンスを作ることはできず。唯一、ペナルティーエリア内でのプレーは3分。ペナルティーエリアすぐ外でショートパスを受けて中に持ち込むと、右足アウトサイドで切り返して1人DFをかわすが、そこでクリアされる。15分、DFからのボールを受けるがファーストタッチが長過ぎてボールロスト。39分、ウルマーからのパスを受けたが、相手にすぐ囲まれてボールを失う。タメを作ることができない」

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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