鎌田大地、衝撃ハットトリックで“壁”を突破 先制点に「1点以上の価値」があった理由
【ドイツ発コラム】ELザルツブルク戦で華麗に3ゴール 「何かを変えているつもりはないけど…」
フランクフルトの日本代表MF鎌田大地が、現地時間20日にホームで行われたUEFAヨーロッパリーグ(EL)ラウンド32のザルツブルクとの第1戦(4-1)で、ハットトリックの大活躍を見せた。今年に入って公式戦2度目となるスタメン出場でしっかりと結果を残したわけだが、そのなかで特にチームの先制ゴールとなった1点目は、ただの1点以上に価値があるゴールだった。
前半12分、スローインから右サイドバックのDFアルマミ・トゥーレがボールを持った時、鎌田は相手DFの背後にできたスペースでフリーになっていた。タイミング良く足もとにパスを受けると、ワンタッチでしっかりとコントロールした後、右足でシュートに持ち込む。そのボールは相手GKの股下を抜いてゴールネットに吸い込まれ、得点を確認した鎌田は両手を広げながら走り出し、笑顔で味方選手と抱き合った。
この右サイドのハーフスペースでパスを受ける動きは、今季鎌田が再三見せていたものだった。パスが来ればゴール、あるいはアシストへとつながるポジション取りはできている。ただ、せっかくそこにポジショニングを取っていても、好タイミングでパスが出てこない。パスが出てきてシュートに持ち込んでも、GKの足に当たってバーを直撃したり、DFがブロックしたりとなかなか得点にならない。それだけに、狙い通りのプレーからしっかりとゴールを奪えたことが、鎌田に大きな安堵をもたらしたのだ。
「そうですね、上手く(ボールを)止められて。今日GKの足に当たったけどゴールに入りました。去年はあれがね、足に当たってバーに当たったりだとか、別に何かを変えているつもりはないですけど、アンラッキーな部分が去年はすごく多かったと思う。本当、あれが入って自分の中で上手く吹っ切れたというか、1点入れるとね、複数得点できることもけっこう多いので。気持ちの面ですごく楽になったと思います」
その言葉どおり、ここから鎌田のプレーがどんどんハマり出す。2点目はドイツ人記者も圧巻の個人技から、鮮やかにゴールを決めた。
前半43分だった。中盤からMFジブリル・ソウのスルーパスで抜け出すと、そのまま単独でドリブルで持ち込んでいく。途中首を振って後ろの様子を確認すると、追いすがる相手を嘲笑うかのように流れるシュートフェイントで外し、飛び出してきたGKの鼻先でフワッと浮かした左足シュートでゴールを決めた。
「こっちの選手に比べてフィジカル面というか、足も速くないし、追いつかれるなと思っていたので。上手くキックフェイントで交わせた。最後の最後まで冷静になれていたというのは、すごく大きかったなと」
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。