「夢を2人でもう一度…」 元日本代表GK小島伸幸、54歳でJクラブコーチ初挑戦の理由

54歳の“1年生”GKコーチとしてJ2へ挑む【写真:伊藤寿学】
54歳の“1年生”GKコーチとしてJ2へ挑む【写真:伊藤寿学】

「このクラブじゃなかったら、オファーを受けることはなかった」

 小島は今、自らが昇格させたクラブのGKコーチとして選手の指導にあたっている。基本を徹底させながらも、GKは心理戦と説く。

「常に相手の心理を考えてプレーしろ」

 トレーニング中は、こんな声が聞こえてくる。そこに極意がある。

 また、テストマッチで若いGKが前へ飛び出した状況でボールを大きく蹴り出すシーンがあった。それを見た小島は、「ボールボーイがすぐにボールを入れてきたら、どうなる? あのシーンは無闇に蹴り出すんじゃなくて、高いキックでライン際に落とすんだ。そうすれば時間を稼げるし、線審がゲームを再開できない」と駆け引きを伝える。群馬のGKたちは、新任GKコーチに絶対的な信頼を寄せている。

「群馬のコーチの話をもらった時に、やらなければいけないと思った。みんなでJ2へ昇格させたこのクラブに、コーチとして戻ってくることができたのは感慨深い。おそらく、このクラブじゃなかったら、オファーを受けることはなかったと思う」

 群馬は昨季のJ3で2位となり、3年ぶりにJ2へ復帰。今季のJ2は、22チーム中12チームがJ1経験のあるクラブだ。群馬にとっては厳しい戦いが予想される。小島は「Jリーグ昇格を目指した時に、暗中模索の中で進んでいったことを考えれば、J2は勝ち点からの目標が組み立てやすい。リーグ戦においてGKは重要なポジション。GKのパフォーマンスで勝ち点プラス10が上乗せできると考えている。プラス10が奪えるGKを育成してチームに貢献するとともに、上のレベルで戦えるGKを育てていきたい」と話す。

「地域リーグ時代は、苦労を重ねながら這い上がってきた。あの時夢見ていた理想のチームを、2人でもう一度追いかけてみたい。そして選手たちには、挑戦によって人生が劇的に変えられることを教えていきたい」

 小島は盟友・奥野とともに、54歳の“1年生”GKコーチとしてJ2へ挑む。(文中敬称略)

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(伊藤寿学 / Hisanori Ito)



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