“脆い”ドルトムントが見事に変貌 PSG戦勝利の立役者を主将称賛「素晴らしい補強だ」

ドイツ代表MFエムレ・ジャン【写真:Getty Images】
ドイツ代表MFエムレ・ジャン【写真:Getty Images】

新加入のジャン、闘争心溢れるプレーでリーダーシップを発揮

 フンメルスは11月のバイエルン戦で0-4と完敗した後、「僕らはまだトップチームではないということ」と苦言を呈していたが、今回は「チームとして組織だって守れていることが大きいね。前線の選手がすごくいい守備をしてくれているし、スペースを消して、ボールの奪い合いにも積極的に汗をかいている。自分たちのやるべきことを素晴らしく実践できていると思う。フランクフルト戦(第22節/4-0)や今日の試合のようなプレーができたら、僕らは本当に本当にいいチームだと思う」と誇らしく語っていた。

 最終ラインでコンビを組んだDFダン=アクセル・ザガドゥとポーランド代表DFウカシュ・ピシュチェクは、それぞれ1対1の局面で何度もボールを奪い取り、ビルドアップでもリズム良くパスを回していた。組織的な守備が機能しているなかで、フンメルスの経験はひと際輝く。最後尾で相手の攻撃を完全に読み取り、ペナルティーエリアへの侵入を許さない。

 そして守備の安定を語るうえで、ボランチとしてブンデスリーガ前節フランクフルト戦からスタメンで起用されているドイツ代表MFエムレ・ジャンの活躍が外せない。

 加入してまだ数週間だが、早くもリーダーシップを発揮し、ピッチ内外でチームを率いる存在となっている。先に挙げたレバークーゼン後には、「リードしている試合の運び方として物足りない。汚れ仕事をもっとしっかりとしないと」と、ズバッと自分たちの弱点を口にしていた。

 この日、ジャンが見せたパフォーマンスはまさにファンが待ち望んでいたものだった。中盤で休むことなく相手選手にプレッシャーをかけ続けていく。競り合いを恐れずに、だからと不用意に飛び込まずに、何度も体を張ってボールを奪い取る。

 象徴的なのが、ドリブル突破を図るネイマールを体ごと押し倒してファウルにしたシーンだ。満員のスタジアムからは大きな拍手が起こった。闘う選手が、熱いハートを感じさせてくれる選手が渇望されていた。ファンは自分たちの思いを全身で受け止めて、それを体現してくれる選手を求めていたのだ。

 フンメルスはそんなジャンについて、「安定感をもたらそうとしてくれている。非常にフィジカルコンタクトに強いし、アスレチック能力が高い。競り合いを恐れないし、全身から気持ちを外に出してプレーしてくれる。まだウチにきて数週間だけど、素晴らしい補強だと思う。彼は勝者のメンタリティーを持っている。どんな試合でも勝ちたいし、そのために全力でやるべきことに取り組んでいくんだ」と称賛していた。

中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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