愛される宮市亮、“悔しさ露わ”の先にある充実感 「怪我の時は感じられなかった」
ルフカイ監督はチームのパフォーマンスを称賛 「本当に小さな幸運があれば…」
試合後ミックスゾーンに姿を現した宮市は、自分たち攻撃陣の不甲斐なさを猛省しながら試合を振り返ってくれた。
「残念ですね、絶対勝てる試合でした。今日は攻撃陣のミスというか、僕らのせいだなという感じです。引き分けですけど、負けのような感じですね。(前半は)絶対決めなきゃいけないシーンが何個かありましたし。最後のあれも、『なんでポスト当たるの?』という感じですけど」
角度はなかった。考える時間もない。それでもシュートコースはしっかりと見えていたという。
「見えていましたね。GKも詰めていたし、ニアの頭上を狙うか、あそこのファーサイドを狙うか……。ファーサイド、けっこう自信があるんで、あそこ入ってくれれば良かったですけど。しょうがないですね」
ヨス・ルフカイ監督は試合後の記者会見で、「結果は喜ばしいものではない」としながらも、チームが見せたパフォーマンスには高い評価を与えていた。
「特に前半は本当に非常にいいサッカーを見せてくれた。攻撃でも守備でも相手を追い込み、ドレスデンに一度も時間とスペースを与えなかった。深く守ろうとしているチーム相手に、あれだけチャンスを作れたのは素晴らしい」
とはいえ、それだけチャンスを作りながら、一度も決定機をモノにできなかったとなれば、ファンも素直に「そうですよね」とは頷けない。地元記者もそのあたりを指摘する。ルフカイはその言い分を認めたうえで、自身の見解を口にしていた。
「チャンスを作り出せなければ得点の可能性もない。だからチャンスを何度も作り出したことはポジティブだ。本当に小さな幸運があれば、前半どこかで1点が取れていれば、さらに追加点を重ねていくことができる試合だった。だが、引き分けのままだとドレスデンは攻め上がってはこない。終盤は難しい展開になった」
ザンクト・パウリは、今年に入ってまだ勝利がない。良い試合が続いているが、結果がついてこない。気持ち的にもなかなか納得できない流れにいる。だからなのだろうか。入らない時はあとちょっとというシュートも入らないという、まさにそんな試合展開になってしまった。そんなふうに話を振ってみたら、宮市も「いや、ホントそうっすね」と返しながら、「でも……」と付け加えて話し出した。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。