19歳FWの衝撃、なぜそんなに得点を取れるのか ゴール量産を支える“迷いなき決断力”
【識者コラム】ブンデスデビュー3試合で7得点、ハーランドの“得点力”が凄まじい
キリアン・ムバッペ(フランス代表FW/パリ・サンジェルマン)が驚異の10代として登場してきた時、日本ではムバッペかエンバペかエムバッペか表記が定まらなかったが、アーリング・ブラウト・ハーランド(デンマーク代表FW/ドルトムント)もホランド、ホーランド、ハーラン、ホーランといろいろな呼ばれ方をしている。あのヨハン・クライフ(元オランダ代表FW)でも、クライシュとかクロイフだったので、まあそんなものかもしれない。
19歳FWハーランドは今冬のマーケットでザルツブルクからドルトムントへ移籍し、いきなりハットトリックでデビューを飾ると、続く2試合も2ゴール。3試合で7得点はブンデスリーガ新記録だそうだ。枠内シュート7本で7ゴールというのも、なんだか凄い。
2019年のU-20ワールドカップ(W杯)にはU-20ノルウェー代表として出場し、ホンジュラス戦で9ゴールを決めたのが印象的だった。ノルウェーは12-0でこの試合に大勝しながらグループリーグで敗退したのだが、ハーランドはこの9ゴールで大会得点王になっている。
194センチ・87キロの巨体、左利き。このサイズで動けるのが一つの特長だろう。けっこうスピードがあり、アジリティーもある。ボール扱いもかなり器用だ。ただ、ハーランドの長所はなんと言っても得点力である。とにかく点を取る。
ゴールゲッターにもいろいろなタイプがあるが、共通するのはとにかく点を取れるということ。上手い選手でも、あまり得点しない人もいる。一方、特に上手い感じはしないのに点だけは取るという選手もいる。フィリッポ・インザーギ(元イタリア代表FW)などは、「オフサイドポジションで点を取る」と言われていて、オフサイドぎりぎりというより、“ぎりぎりオフサイドなポジション”から多くの点を取っていた。これも一つの才能である。
10代で頭角を現したゴールゲッターといえば、1958年W杯のペレ(元ブラジル代表FW)が思い浮かぶ。抜群のボールコントロールと柔らかい身のこなしで、DFを嘲笑うようなゴールを決めて世界を驚かせた。颯爽とデビューしたマイケル・オーウェン(元イングランド代表FW)は、スピードが持ち味だった。ムバッペも驚異的な速さが武器だ。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。