日本は「東南アジア勢にとってのブラジル」になれるか ACLで実感、Jリーグに迫る脅威
日本が東南アジア諸国を牽引していくのは好ましい流れだが…
かつてアマチュア時代の日本には、当初の日系人を中心にブラジルから人材が流入し、日本側の同国への憧憬もありテクニカルな流れが定着していった。
同じように、最近では日本から東南アジアに活躍の場を移す指導者や選手が増加傾向にあり、Jリーグにもチャナティップ(北海道コンサドーレ札幌)やティーラトン(横浜F・マリノス)の活躍によって、タイのメディアが多数訪れるようになっている。こうして交流が深まれば、必然的に差は縮まっていく。それは参加国が増えてから一方的な試合が消えていったワールドカップや、高校選手権の歴史が証明している。
日本が近隣の東南アジア諸国を牽引していけるなら、それは好ましい流れだ。だが追われる立場としては、その刺激をバネに成長につなげていかなければ意味がない。日本が東南アジア諸国にとってブラジルのような高い壁になるためにも、ACLのプレーオフからしっかりと準備を施せるシーズン設定は、Jリーグの喫緊のテーマである。
(加部 究 / Kiwamu Kabe)
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。