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内田篤人はなぜ代表引退を考えたのか 試練が気づかせてくれた“本当の気持ち”
けががあと数ミリずれていたらW杯は絶望だった
日本での診断結果は「手術回避。W杯には間に合う」というものだった。負傷した腱は膝の裏、両外側に2本通っているうちの1つ。骨よりも柔らかく、肉よりも硬いスジのようなものを指す。
日本の医師によれば「あと数ミリ下が切れていたら、手術を受けなければいけなかった。そうなるとW杯は無理だった」という説明だった。
「(完治は)そんなに簡単じゃない。無理しちゃいけないのは自分でも分かっているけれど、W杯は注目度が高い大会だし、自分のサッカー人生の中でも大事なポイントを迎えている。治るかどうか、それは僕の足に聞いてみないと分からない。けれど、自分が今、無理のしどきであることは間違いない。焦って再発させたら、それこそW杯に出られなくなる。早く復帰したいけど、それが一番ダメだから。だから、慎重にやっていきたい。やることをやって、しっかり治して、後はザックさんに判断してもらえればいい」
日本で1カ月、ドイツでは2カ月をリハビリに費やした。
おおむね順調だったが、その過程で反対の左足に痛みが出たため、当初の予定より復帰が1週間遅れた。日本代表のメディカルスタッフの支えを受けたが、実戦復帰はかなわないまま、W杯のメンバー発表当日となる5月12日を迎えた。これまで、復帰しないままメンバー入りしたケースがほとんどないことは分かっていた。
「できれば、発表の日までに実戦復帰したかったのは事実。でも、間に合わなかった。やれることはやったし、いろいろな人に助けてもらった。これまで代表で自分がやってきたことを信じて、発表を待ちたい」
腹をくくって待った。
ザッケローニ監督から「ウチダ」という名前が読み上げられると、「拾ってもらった」と安堵した。
「これは、もう自分だけの問題ではなくなった。いろいろな支えがあって、メンバーに入ることができた。その人たちの分も背負って、ブラジルに行きたい」