西野朗監督、タイの“国民性”を包み込む指導で8強入り 東京五輪切符まであと2勝

タイ代表を率いる西野朗監督【写真:Getty Images】
タイ代表を率いる西野朗監督【写真:Getty Images】

【現場発】西野監督率いるタイはA組2位通過で18日に準々決勝

 西野朗監督率いるU-23タイ代表は18日、地元で開催されているU-23アジア選手権で準々決勝サウジアラビア戦を迎える。14日、イラクとのグループリーグ(GL)第3戦を1-1で引き分け、2位で史上初のGL突破を決めた。第1戦バーレーン戦(5-0)、第2戦オーストラリア戦(1-2)からメンバーを大幅に入れ替えて臨み、GL突破が懸かる第3戦は大胆なターンオーバー。総力戦でベスト8をつかみ取り、東京五輪切符まであと2勝と迫った。

 14日のイラク戦。地鳴りするような1万5000人以上の大歓声がバンコクの夜空に響き渡った。スタンドには涙を流して喜ぶ人の姿も。歴史的なGL突破に西野監督は会見場へ自ら拍手して入ってきた。「コップンカップ」。タイ語の「ありがとうございます」を披露し、まずは大きな一歩を喜んだ。

 初戦のバーレーン戦。約7000人の観衆が詰めかけた。結果は90分間相手を圧倒し続け、ゴールラッシュの5-0。次のオーストラリア戦は土曜日ということもあって観客は2万2000人を超えた。

 今大会中、バンコクでは街中のあらゆるテレビでサッカーが映し出されている。スポーツバーだけではなく、スーパーや個人商店、ホテルのロビー。タイのスポーツ新聞の一面はサッカーが飾っている。タクシーの運転手には、こちらが日本人だと分かると「アキラ・ニシノ! ナイスコーチ!」と笑顔で声を掛けられ、中心地のビルの大型ビジョンには今大会のCMが流れる。中国で開催された前回大会、4年前のリオデジャネイロ最終予選を兼ねたカタール大会も取材したが、U-23アジア選手権でこの盛り上がりは見たことがなかった。

 タイのサッカー界ではこれまでも日本人が指導することがあった。現在も、鹿島アントラーズや大宮アルディージャで指揮を執った石井正忠監督がタイ1部サムットプラーカーン・シティを率いている。そのなかでもやはり“国民性”の違いは出てくる。同国サッカー協会関係者によると、「タイは年中暑いので、(タイ人は)何をやるにもなかなかスイッチを入れられない。リーグでは特に試合においてプレー自体が間延びしてしまう」という。

 “微笑みの国”と呼ばれるタイ。おおらかなで優しい性格の一方で練習に遅刻しても気にしないこともあるようだ。そんななか、西野監督はタイの国民性も受け入れたうえで、“スイッチ”を入れられるように指示を送っている。

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