東京五輪代表の混迷招いた「JFAの責任は重い」 欧州組“急増”で崩れた強化のビジョン
いまだラージグループで競わせ混迷しているのは、ビジョンが描けていなかった証左
一方で7月から8月にかけてシーズンインする欧州の各クラブが、主力選手たちの五輪出場を渋るのは目に見えている。つまり、今回の五輪は自国リーグの質と本気度を問われる大会で、おそらく南米代表やメキシコなどが有力な優勝候補になる。
反面、日本は最悪のタイミングで東京五輪を迎えたと言えるかもしれない。ここ数年で欧州進出の若年化が加速したため、A代表だけでなくU-23日本代表まで欧州組が主力の大半を占めることになった。個のレベルは上がったが、その分、強化日程が確保できなくなった。
サッカーの中心が欧州で、誰に五輪参加の許可を出すかはクラブ側の胸三寸。そう考えれば、五輪代表の命運を握るのは、むしろ監督以上に技術委員会の交渉力になる。オーバーエイジも含めて掛け値なしのベストを招集できれば、目標とする金メダルのレベルが日本でも手の届くところまで落ちてくる可能性もある。ただしこの時期にラージグループで競わせ、混迷を深めているのは、東京五輪の特殊事情に合わせた強化のビジョンが十分に描けていなかった証左だ。
欧州組の招集が計算できないなら、まず国内組を軸に戦術を浸透させ、最後に必要最小限の欧州組を組み込むなど次善の策はあったはずだ。そういう意味で、A代表と兼任する森保監督の日程的なドタバタぶりを見ても、アジアで惨敗を招いたJFAの責任は重い。
昨年末、皇后杯決勝が行われた大宮のNACK5スタジアムでは、挨拶する田嶋会長へ痛烈なブーイングが浴びせられていた。
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(加部 究 / Kiwamu Kabe)
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。