新潟県勢“初4強”、惜敗の帝京長岡が未来につないだ夢 敵将も唸った多彩な攻撃スタイル
青森山田をシュート数17対6と圧倒も…1-2と敗れ決勝進出を逃す
第98回全国高校サッカー選手権は11日、埼玉スタジアムで準決勝2試合が行われ、新潟県勢として初のベスト4に進んだ帝京長岡(新潟)は、連覇を目指す青森山田(青森)に1-2で敗れ、悲願の決勝進出はならなかった。
いったい帝京長岡の選手は、何度頭を抱えたことか。
前半キックオフの笛が攻撃のスイッチを入れる進軍ラッパとなり、立ち上がりから軽やかなドリブルと短いパス交換、鋭いサイドアタックで青森山田ゴールに襲いかかった。前半4分のMF谷内田哲平のシュートを皮切りに5分、6分、11分、22分、31分、37分……。決定的な得点チャンスだけを列記してみても、これだけある。
ピッチを幅広く使うかと思えば、スルーパスで相手守備網の背後を突いたり、バックパスにいち早く反応してかっさらう抜け目のない動きなど、とにかく攻めの選択肢は多彩。敵将・黒田剛監督の言葉からも、攻勢の時間帯がどれだけ帝京長岡にあったかが窺い知れる。
「幸運でした。前半は0-2で負けてもおかしくない内容で、評価できるのは無失点に抑えたことだけ。失点する気配があり、首の皮一枚でつながっていた」
ビッグチャンスを逃し続けていると、サッカーの神様から罰を受ける――。プロの指導者はよくこんな話をするものだが、前半16分に右クロスから青森山田のFW田中翔太のヘディングシュートで先制され、後半2分には同じく右クロスのこぼれ球を1年生MF松木玖生に蹴り込まれて決勝点を献上してしまった。
左サイドからこれでもか、というほど仕掛けて好クロスを配球。自らも前半6分に決定打を放ったMF本田翔英は、「あれだけ決定的なシュートを打ったのに決められなかったのは、青森山田の守備の凄さもあったけど、自分たちのシュート精度が足りなかったから。前半にしっかり決めていたら、後半はさらに勢いを持って戦えた」と反省し、顔をしかめて残念がった。
後半も開始直後の失点を除けば大きなピンチは極めて少なく、決定機も2度。青森山田の動きが鈍くなってきた後半32分には、MF田中克幸が緩急をつけたドリブルで長い距離を運び、3人のマーカーを置き去りにして左足シュート。ゴール右隅に決まった。残り時間はアディショナルタイムを含めて、まだ18分もあった。田中は「パスの選択肢もあったが、自分の間合いで運んでしっかり決められました」と冷静に得点場面を振り返る。
河野 正
1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。