独1部デビューを目指す19歳日本人MF 「いい道を歩いている」U-23監督、精神面を評価
アペルカンプは「試合の流れを読んで、正しい決断ができる」
「非常にいい選手だ。とてもいい成長をしている。この夏から見ているが、素晴らしい性格をしているし、非常に良い心構えで、プロフェッショナルに取り組んでいる。優れたプレーヤーで、効果的なプレーをすることができる点がいいね。ゴールをアシストし、ゴールを決めることができる選手だ。ここまでのシンタの成長ぶりには、とても満足しているよ」
ポジティブな言葉が並ぶ。U-19から昇格1年目で10番を背負い、中心的な役割を担っているのは、その期待の表れだろう。
ボックス・トゥ・ボックスの選手としてプレーするためには、ただピッチを走っていればいいわけではない。競り合いにおける激しさから逃げることなく闘いながら、その激しさの中に埋没していってはいけないのだから。
「さっきも言ったところだけど、シンタの長所は効果的なプレーができるということだね。アシストもゴールもできるし、チームのために走ることができる。体の面で言えば、大きい選手ではないが、彼はフィジカルコンタクトを怖がらない。状況を非常に機敏に切り抜けることができる。試合の流れを読んで、正しい決断ができるからだ。それは守備でもだ。彼はプレーインテリジェンスを持っているチームプレーヤーだ」
一方でアペルカンプが今、U-23で取り組まなければならない課題とはなんだろうか。
「フィジカルに取り組むことは大事だね。強靭さを身につけていくことだ。1部、2部リーグともなれば、相手のプレッシャーは比べものにならないほど速く、強い。どんな状況下でもビクともしない、どっしりとした強靭さは大切になる。それ以外はとにかく、毎日の練習をハードに取り組んでいくことだ」
そしてこちらの意図をすべて分かったかのように頷いて、ミヒャティ監督は最後にこう付け加えてくれた。
「いい道を歩いているよ。彼がいつの日かプロの扉を開けて、そこでやり遂げることができると信じている」
その眼差しはとても優しかった。
多くの人々がアペルカンプを支え、信頼し、見守っている。そしてアペルカンプも自分がサッカーと向き合えることのありがたさに感謝を忘れず、自分ができることに向き合っているのだ。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。