「ベスト4がゴールではない」 新潟県勢初の“選手権4強”、帝京長岡が挑む新たな歴史の扉
電光石火の一撃で仙台育英に1-0勝利 殊勲の谷内田「自分でもびっくり」
第98回全国高校サッカー選手権は5日に準々決勝4試合が行われ、等々力陸上競技場での第2試合では前回大会8強の帝京長岡(新潟)が仙台育英(宮城)を1-0で破り、新潟県勢として初のベスト4進出を果たした。
まさに電光石火の先制ゴールだった。前半1分、JリーグのFC町田ゼルビア入りが内定しているFW晴山岬が左サイドを運び、京都サンガF.C.加入が内定したMF谷内田哲平が右足で合わせた。この先制点が結局決勝ゴールとなったのだが、谷内田も「あんな早い時間での得点に自分でもびっくりです」と話した後、「岬が持った瞬間、あそこに上げてくるのは感覚的に分かっていた」と、以心伝心の一撃だったとした。
初戦となった2回戦は熊本国府(熊本)に3-0、3回戦は神戸弘陵学園(兵庫)を5-0と圧倒。この日は仙台育英の3倍以上の13本のシュートをお見舞いしながら、あの1点しか奪えなかった。
谷内田は「チームとしても個人としても、あまりいい出来ではなかった」と首を傾げ、守備の中心で愛媛FCへの加入が内定しているDF吉田晴稀も「攻撃陣も良くなかったし、無失点とは言うものの僕ら守備陣も調子はいまいちでした」と話し、持ち味を出し切ったサッカーではなかったことを明かす。
前回大会は同じ等々力陸上競技場での準々決勝で尚志(福島)に0-1で屈した。谷内田や晴山、吉田晴をはじめ、当時のレギュラーを6人抱える今大会は昨年よりも攻守の質を高めて乗り込んできたわけだ。
就任7年目の古沢徹監督は「1点を守り切った形で勝てて嬉しい。昨年は3年生に(準々決勝まで)連れてきてもらった。ベスト4はその経験に尽きる」と前回の最上級生のリーダーシップに感謝し、「でもこの1年間の経験だけではなく、今までの新潟県勢が積み上げてきたもののおかげです」と、先人たちに謝辞を述べた。
河野 正
1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。