“セットプレー4発”に泣いた富山第一、途中出場の3年生が意地の一撃 「憧れの舞台で…」
“王者”青森山田に1-4で敗れ8強逃す… 途中出場のMF矢崎がFKから1ゴール
第98回全国高校サッカー選手権は3日、首都圏4会場で3回戦8試合が行われ、準々決勝に進む8チームが出揃った。第92回大会の優勝校である富山第一(富山)は、連覇を目指す“王者”青森山田(青森)に1-4で完敗し、4大会ぶりのベスト8はならなかった。
序盤は両チームとも長いキックを放り込む戦法を使い、こぼれ球を拾ってから2次攻撃に移行する展開だった。ところが流れのなかからは決定的な形になかなか発展せず、この試合の計5得点はすべてセットプレーから生まれた。つまり富山第一は、4点ともセットプレーでゴールを割られた。大塚一朗監督は「セットプレーは警戒していたのに……。反省しています。(マークなどの)役割を決めていたのに、ハッキリしなくてフリーでやられてしまった」と消沈した。
富山第一の初失点は、青森山田の武器の一つであるロングスローから。前半7分、DF内田陽介が左タッチラインから遠投。ヘディングシュートのこぼれ球をMF松木玖生に押し込まれた。前半は7本のシュートを打たれたが、粘り強く応対して1失点にとどめた。
しかし後半4分、左FKからFW田中翔太に完全なフリーの形からヘディングで決められた。大塚監督は1点目に加え、この2点目も悔やんだ。「やられてはいけない前半と後半の初めの時間帯にやられたのが痛かった。それに尽きる」と悔しがる。さらに同19分には、右CKからまたもやヘディングで、同35分にも左CKからヘディングで失点したことで、万事休してしまった。
富山第一は攻撃に転じても、有効なパスがなかなか通らず、単発のつなぎばかりで崩しの必殺パスを前線に供給できなかった。守備ラインと前線の間隔が間延びしていたことも、青森山田の守備を助けた格好になった。
それでも3点を追う後半29分、DF真田滉大が中央から蹴ったFKを左サイドでDF吉藤廉が頭で折り返すと、途中出場のMF矢崎謙介がこれをヘディングシュートで突き刺し、意地の1点を返した。
3年生の矢崎は目を真っ赤に腫らしながら、「3点差でしたが、あと10分あり、反撃の狼煙というか、そういう一発を決められて良かった。あの得点は練習通りの形です。セットプレーから取れたのは、チームとして形を残せたということなので嬉しい」と声を振り絞り、「憧れの全国選手権の舞台に立ち、日本一の青森山田としっかり戦えたことは誇りです」と、最後は潔さと清々しさが詰まった言葉で締め括った。
(河野 正 / Tadashi Kawano)
河野 正
1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。