1年生で5人目のPKキッカー 日章学園、次期エースへの“バトン” 「誰でもできるわけではない」

悔しがる日章学園の選手【写真:Football ZONE web】
悔しがる日章学園の選手【写真:Football ZONE web】

2戦連続でPK戦の日章学園は3回戦敗退 5人目のキッカーを任された1年生FW木脇蓮苑

 第98回全国高校サッカー選手権は3日、四日市中央工業(三重)対日章学園(宮崎)の3回戦を行い、3-3で迎えたPK戦の末、日章学園は3-4で敗れた。2戦連続のPK戦となったが、どちらの試合でも5人目のキッカーを務めたのはエースナンバーを背負う1年生だった。

 日章学園は2回戦で優勝候補の市立船橋と激突。0-0の末に迎えたPK戦で7-6と競り勝った。3回戦もPK戦に突入し、外したら敗退が決する局面で5人目のキッカーを務めたのは、1年生のFW木脇蓮苑。コースを狙ったシュートはポスト左を叩き、ボールは無情にもゴールマウスから離れていった。

 四日市中央工業の面々が歓喜を爆発させたのと同時に、木脇はピッチに崩れ落ち、両手で顔抑えて号泣。チームメートが駆け寄り慰めの言葉を掛けるも、木脇の涙が収まらず、しばらく起き上がることができなかった。

 試合後、木脇は「自分がPK を外して、3年生の3年間を終わらせてしまった。悔しさでいっぱい。狙いすぎた。自分はあのコースしか蹴らないと決めていた。中学生の頃からPKを外したことはなかった」と俯きながら口にし、「来年、再来年にここに戻ってきて、3年生の分まで頑張りたい」と言葉を絞り出した。

 PK失敗の責任に打ちひしがれていた木脇だが、一緒に戦った仲間たちは、大舞台で堂々たるパフォーマンスを発揮した1年生に、温かなエールを送っている。

「1年生なのにフル出場で戦って、PKまで蹴って、よく頑張ってくれた」。早稲田一男監督は木脇を労わる言葉を送り、木脇が身につけるエースナンバーの一つである背番号「11」も「実力で勝ち取った背番号。そして、このチームの未来を担う存在」と日章学園の次期エースとして太鼓判を押していた。

 主将を務めるDF阿部稜汰(3年)は、失意に沈む木脇に対し、「この舞台で、しかも1年生でPK を蹴る経験は、誰にでもできるものではない。そう言葉をかけた」と振り返り、「技術もある。中学生時代に全国制覇の経験もある。日頃からの練習でも必ずPKを決める。チームメート全員、全幅の信頼を持ってキッカーに送り出した。だから、誰も責めることはない」と語った。

 主将は最後に「1年生からフル出場なんて、本当に凄いこと。プロだって狙える可能性を秘めている。日本一の夢を、託します」と締め括り、日章学園が目指す“悲願のバトン”をつないだ。木脇の選手権は、まだ始まったばかりだ。

(FOOTBALL ZONE編集部・城福達也 / Tatsuya Jofuku)



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