「まるでスペインとイタリアの試合」 富山第一、“持久戦”を制して高まるチーム力
インターハイ準Vの富山第一が神村学園に粘り勝ち、虎の子の1点を守り切る
第98回全国高校サッカー選手権は2日、首都圏8会場で2回戦16試合が行われ、浦和駒場スタジアムでは夏のインターハイ準優勝の富山第一(富山)が神村学園(鹿児島)に1-0で競り勝ち、2大会ぶりの3回戦進出を決めた。
大晦日の1回戦は立正大淞南(島根)に二度も先行されながら、後半終了間際に追い付き、PK戦で勝ち上がった。この日も際どい試合をものにしたことで、大塚一朗監督は「確実に決められる場面で決めておけば、もう少し楽な試合展開だった。きちんと決められるようにしないといけませんね」と振り返った。
シュート数では神村学園のほうが2本多い9本を放った。決定的な一撃でも劣った。敵将・有村圭一郎監督が、「ボールを動かすということでは負けなかった」と話したように、特に後半はMF濵屋悠哉やMF永吉飛翔を中心に、右から左から中央から侵入されて何度もピンチを招いた。幸い決定打と思われたシュートがGKの正面を突いたり、キックミスで枠に飛ばなかったりと、幸運も手伝って無失点でしのいだ。
前半16分、左CKからDF丸山以祐がヘディングで決めた虎の子の1点を、くたくたになりながら守り切った辛勝だった。
大塚監督の例えが的を射ていた。「相手はボール回しが上手く、まるでスペインとイタリアの試合でしたね」と苦笑した。スペインのようなパスワークで攻め立てる攻撃的な神村学園と、カテナチオと呼ばれる伝統的な守備力を背景に1点を取って逃げ切るイタリアを自分たちに見立てたのだ。
無失点で切り抜けられたのは、1回戦の反省を生かしたことも大きいようだ。決勝点を決めた丸山は、2回戦に向けて守備陣だけで集まりミーティングしたことを明かした。
「1回戦を分析したら、守備ラインの高さがずれていて、裏を突かれていました。しっかりとゾーンで守るように修正して臨みました。今日はそれができたので、相手に点をやらなかった」
これで2試合続けて接戦をものにした。じりじりする持久戦を制するたびに、高校生は成長するもの。3回戦の相手は連覇を狙う青森山田(青森)だが、粘り強い試合運びを続ける富山第一だけに勝機は十分にありそうで、楽しみな一戦となった。
(河野 正 / Tadashi Kawano)
河野 正
1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。