覚悟を決めたレッドカード 日章学園主将、DF古賀の退場処分に「全員異議はなかった」
日章学園がPK戦で市立船橋を下し3回戦進出、終了間際のピンチをDF古賀がファウルで止めて退場処分
第98回全国高校サッカー選手権の2回戦が2日に行われ、日章学園(宮崎)は優勝候補の市立船橋(千葉)に0-0で突入したPK戦を7-6で制し、3回戦に進出した。試合後、主将を務めるDF阿部稜太(3年)は終了間際にDF古賀照也(2年)が、この試合2度目の警告を受けて退場したシーンについて語っている。
3大会連続の選手権出場を果たした日章学園は、優勝候補の市立船橋と千葉県のフクダ電子アリーナで戦うという、文字通りアウェーの環境で初戦に臨んだ。Jリーグ内定者を2人擁する市立船橋に対し、最前線から連動してプレッシングをかける組織的な守備で無失点を維持していた。
後半に入ると、市立船橋の右サイドバック(SB)を務める湘南ベルマーレ内定DF畑大雅(3年)のところから、立て続けにピンチを迎える場面が続く。そして0-0で迎えた後半アディショナルタイムだった。畑の切れ味鋭いドリブルでサイドを突破され、ゴール前で市立船橋の選手が待ち構える最大のピンチが訪れた瞬間、ペナルティーエリアに侵入される手前で古賀がタックルで妨害。このプレーで主審から2枚目のイエローカードが提示され、退場が宣告された。
本人もファウル覚悟のタックルだったのか、異議を唱えることなく判定を受け入れ、チームメートの激励を受けながらピッチを後に。試合はそのまま0-0で終了し、PK戦に突入。日章学園は7人のキッカー全員がシュートを成功させ、接戦を制した。
試合後、主将の阿部は古賀がレッドカードを受けたシーンについて、「あそこで止められなかったら、非常に危険な場面になっていた。(退場シーンは)全員がイエローだと思ったから、本人を含めて異議はなかった。みんなで古賀に『大丈夫』と声をかけ続けた」と振り返った。そして古賀は前回大会も1年生でレギュラーを務めていたが、2回戦の矢板中央(栃木)戦でPKを献上し、それが決勝点となって1-2で敗れたエピソードを引き合いに出し、「あの前例があったから、今日のタックルの判断ができたのだと思う」と、ギリギリの状況で下した覚悟のワンプレーを振り返っていた。
「次の試合、彼は出られないので、古賀の分も背負って戦うとロッカールームでも話した。彼は1年生から出ている分、他の選手よりも大会に強い気持ちを持っているので」(阿部)
もちろん、ファウル覚悟で相手を止めるプレーは決して褒められたものではない。だが選手権に対し、誰よりも強い思いを抱いているからこそ、退場を覚悟してピンチを防いだ古賀を「もう一度ピッチに立たせてやる」と、主将は次戦に向けて並々ならぬ決意を示していた。
(FOOTBALL ZONE編集部・城福達也 / Tatsuya Jofuku)