開始8分で涙の負傷交代 東久留米総合の主将DF下田、仲間の奮闘に感謝「笑顔で終われた」
“公立の雄”対決で守備の要を襲った悲運
第98回全国高校サッカー選手権1回戦、“公立の雄”対決で誰よりも悔しさを味わったのは東久留米総合(東京A)のキャプテン、DF下田将太郎だった。
31日に味の素フィールド西が丘で行われた草津東(滋賀)との1回戦、開始早々に相手エースのシュートを必死のブロックで防ごうとしたところで右足を痛め、わずか8分でピッチを去ったのだ。
「スライディングで防ごうとしたところ、足が出てきて……仕方ないです」
試合後、下田はこう語った。
同校は都大会では2回戦から決勝まで4試合連続で1-0と勝利。まさに“ウノゼロの方程式”ができ上がっていた。それを下支えしていたのはディフェンスリーダーの下田が統べる4バックだったが、前半4分にまさかの事態が起こる。草津東の左からのクロスを相手のエースFW渡邉颯太に巧みなボールコントロールからシュートを決められ、東久留米総合は先制点を許す展開となった。
ここで必死にブロックに行った際、下田は右足首付近を痛めてしまった。緊急治療を施して立ち上がったものの、骨折の可能性もある状況でのプレーは難しく、同学年で日々のトレーニングで空中戦を磨き合ったDF鈴木亜藍に思いを託した。
ここから草津東は中盤で巧みにボールを動かしつつ、素早い攻撃を仕掛けてくる。前半19分にはCKからオウンゴールを誘発し、同31分には再び渡邉が豪快に蹴り込み3-0。東久留米総合が迎えた苦境を下田は痛めた足をアイシングし、ベンチで見つめるしかなかった。加藤悠監督は「今まで下田がいないゲームがなかった。混乱した部分がある。(負傷については)かわいそうで仕方ない」とも話していた。
それでも後半に入って東久留米総合は、不屈のメンタルを見せる。同5分にFW松山翔哉がドリブルシュートでゴールを脅すと、同13分にはその松山が執念のスライディングシュートを決める。同24分にはロングボールに相手GKが飛び出し、DFのクリアがこぼれたところを7番MF柳田晃陽が無人のゴールに蹴り込み、ついに1点差。下田のために――そんな気持ちを感じさせる逆襲劇だった。実際、指揮官も「練習していたことを出してくれて僕自身も楽しかった」と語ったほどだ。