「こんなに強いチームがあるのか」 8失点のGK、選手権惨敗も晴れやかな表情の理由
國學院久我山が開幕戦で8ゴールの大爆発 前原GK中山「沖縄にはないレベル。これが県外」
第98回全国高校サッカー選手権は30日、國學院久我山(東京B)と前原(沖縄)の開幕戦が行われ、前原が0-8で大敗。開幕戦史上最多失点での敗退となったが、前原のGK中山音弥(2年)は「こんなに強いチームがあるのか」と、國學院久我山に驚きを隠しきれない様子だった。
5年ぶりの選手権出場を果たした前原は大会初勝利を目指していたが、立ちはだかったのは前回参加した2014年大会の1回戦で敗れた國學院久我山だった。前半だけで3失点を喫すると、後半には5失点を重ね、2人の相手FWにハットトリックを許し、開幕戦史上最多失点という不名誉な記録も樹立してしまった。
それでも試合後、守護神を務めた中山の表情は晴れやかだった。GKにとっては特に辛い試合展開となったが、「8点も取られた経験は初めて。こんなに強いチームがあるのか。シュートを30何本か打たれて、そのなかで8失点。これだけ決められたことはなかった」と、その力量の差に悔しさよりも驚きが上回ったような様子を見せていた。
「パスの速さ、ドリブルは沖縄にはないレベルだと感じた。これが県外なんだなと。とにかくレベルが高かった。体も強いし、ハイボールの処理の仕方は段違いだった。めちゃくちゃ強かった」と振り返り、この8点差を今後どのように縮めていけばいいかを尋ねると、しばらく考え込んだ後に「難しいと思う」と、その“差”を埋めるイメージが湧かないほどだった。
しかし、一つだけ試合を通してブレないことがあった。
「失点を重ねてしまっていたけど、後半の中盤以降は『試合を楽しもう』とみんなで声をかけ合っていた。3年生と一緒に戦う最後の試合になるから」
中山はそう語った。
前原の選手たちは、“サッカーを楽しむ”信念を最後まで貫いてみせた。“歴史的惨敗”のなかで中山の見せた、どこか晴れやかな表情は、相手チームの強さに脱帽したこと、そして、最後までサッカーを楽しむことを貫いた証だったようだ。
(FOOTBALL ZONE編集部・城福達也 / Tatsuya Jofuku)