リバプール南野、クロップ“第2世代”への挑戦 “完璧を求めない”名将も確信「ウチにフィットする」
【英国発コラム】クロップ監督会見を現地取材、攻守両面の万能性を評価
「我々の人生は完璧な瞬間を追い求めるより、失敗と向き合うことのほうが多い。それはフットボールも全く同じだ」
このユルゲン・クロップの言葉を聞いた瞬間、なぜ今季のリバプールに試合終盤の決勝弾が生まれ、勝ち点3をもぎ取り続けるのか理解できたような気持ちになった。
またなぜ、モハメド・サラーやサディオ・マネ、ロベルト・フィルミーノをはじめとするリバプールのアタッカーが、決定機を外した直後に、外した状況と比較にならないほど困難な形からスーパーゴールを決めるのか、その理由も垣間見た気もした。
そしてこの監督にしっかりとついていくことができれば、リバプールに新加入した南野拓実が、これまでに日本人が到達したことのない高みに達するという予感が強烈に湧き出した。
◇ ◇ ◇
UEFAチャンピオンズリーグ(CL)最終戦後に、英国メディアで南野のリバプール移籍報道が一斉に流れたことを受け、去る12月13日、筆者はクロップの定例会見に出席した。
そこでドイツ人闘将に「たぶん、君とはこれからたびたび顔を合わせることになるだろうな」と言われ、移籍を確信した。しかし、それからわずか5日後に契約が正式発表されるとは思わなかった。移籍解禁となる1月1日まで、まだ2週間もあった12月18日の午前中、「スカイ・スポーツ」が南野のリバプール入りをスクープ。同日、早くもメディカルチェックをパスし、一気に契約書にサインした。
まるでリバプールの速攻カウンターのように、スピーディーで鮮やかな移籍だった。しかも12月中に契約を発表するのは異例。近年のプレミアリーグで、これほど手際が良くとんとん拍子で決まった移籍は記憶がない。それもリバプールが、南野を本気で欲しがった証だろう。それはともかく、これで2020年元日には晴れて南野が世界チャンピオンの一員になることが決まったわけだ。
となると、気になるのが南野の起用法だ。そこで今後の南野の処遇を探るために、筆者は再びクロップの定例会見に出かけることにした。24日、クリスマスイブの午前9時半からの会見だった。
森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。