U-18王者が“レベルの落ちる”選手権を過密日程で戦う矛盾 高校サッカーの“健全化”は急務

桐光学園で年代別の代表にも選ばれているMF西川潤【写真:Football ZONE web】
桐光学園で年代別の代表にも選ばれているMF西川潤【写真:Football ZONE web】

JFAと高体連で船頭が2人、そのしわ寄せは最も大切な選手に…

 桐光学園の西川潤を例にとれば、このインターハイで2年連続して決勝に進出。3年時の今年はU-17、U-20と2つのワールドカップを戦い、セレッソ大阪の特別指定選手としてプロデビューも果たしている。これでは体が悲鳴を挙げないほうがおかしい。

 結局JFAはリーグ戦を導入したが、一方で高体連のスケジュールは手つかずに継続されている。要するにJFAと高体連で船頭が2人もいるから、そのしわ寄せが最も大切な選手たちに向かってしまっている。リーグ戦で試合数を担保したなら、当然カップ戦は削り、オフも含めた健全なシーズン設定は急務なのだ。実際現場の監督、コーチからもインターハイを歓迎する声は聞いたことがないが、撤廃に向かう動きは見えてこない。

 もともとサッカー界は他競技に先駆けて、指導者養成制度やトップリーグを創設し、プロ化とともに育成組織も整えてきたのだ。やはりそろそろJFAは高体連から脱却し、クラブ、高校を問わず統一された理念で育成を主導するべき時が来ている。それは未来につながる長期的視野に立てば、ワールドカップ誘致や代表強化以上に重要なテーマだと思う。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)



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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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