「自分たちのサッカー」を貫くのは正解か 長谷部と鎌田が直面、“持たされる”苦しさ
「体力を使う戦術」で下位相手に取りこぼす歯がゆさ
元日本代表MF長谷部誠も、なかなか修正できない現状にもどかしさを感じている。
「やっていてもけっこう間延びしているというか、選手の距離感も遠い。そうなればセカンドボールもなかなか拾えない。間延びという部分は今日だけの話じゃなくて、最近ずっとチームの中で話している。もう少しやり方というか、前から(プレスに)行くのはいいけど、今日の相手はロングボールを蹴ってくるというのが分かっているなら、そんなに前から行ってもしょうがないかなというのはあった。試合が多いなかで、いわゆる体力を使う戦術をやっているので、そこは少しみんなフレッシュさが欠けてきているかなと」
ブロックを敷いて守備を固める相手を崩そうと、フレッシュさがあった序盤はまだ勢いで押し切ることもできた。だが、少しずつ足が止まるようになると、相手は対策を立てるのが簡単になる。守備を固めてカウンター。足の速い選手を前において、広大なスペースを狙い続ければフランクフルトはどんどん体力を消耗していく。相手が策を練って待ち構えているところに、真っ向から飛び込んでいくのは勇敢なのだろうか。
ここ最近、フランクフルトは流れのなかでゴールが取れていない。取れていないどころか、チャンスもほとんど作れていない。勝てていた時に表面化していなかった問題が、今勝ててなくてより色濃く出てきてしまっていると言えるだろうか。試合を重ねていくことで、少しずつできるようになると思われていたが、体力的な疲れ以上に頭の疲れが大きく、労力がかかることに集中して取り組みにくいというサイクルになってしまっている。
「結局、ウチが勝ち点を取れているのは上のチームとの時が多くて。やることがはっきりしている時のほうがいい。ボールを持たされたりのほうが苦しんでいる。戦力的に見たら、ブンデスでも悪くないと思いますけど、上手くいかないとこれだけ勝てないこともあるんだなと。サッカーはそういう部分もあるので、難しさは感じますね」
鎌田はそう分析していた。自分たちらしいダイナミックなサッカーをベースにしながら、それを生かすために、それを勝ち点に結びつけるために、それをシーズン通してやり通せるものにするために微調整していくことが必要だ。後半戦ではアディ・ヒュッター監督の采配が、これまで以上に注目される。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。