3回戦敗退の松山工 全国で手にした50年ぶりの一勝と、価値ある道のり

50年ぶりの勝利と後輩たちに残した姿

 駒大高戦での惜敗後、兵頭はピッチに倒れこむ仲間たちの肩を抱えて応援席へとあいさつを済ませた。しかし、主将はベンチに帰ってくると、張り詰めた糸が切れたかのように抑えていた感情があふれ出し、その場に泣き崩れてしまった。彼は、最後までピッチの上ではキャプテンとして気丈に振る舞ったのだ。
「サッカーを通じて、大人との付き合い方、周囲への気遣い、人としての在り方、本当にいろいろ学ぶことができた。僕はキャプテンとして、先頭に立って引っ張っていこうとは思っていない。僕は、皆と同じ位置に立って、一緒に歩いていくリーダーシップを選んだ。だから、僕を含め3年生も、荷物運びや雑用仕事を率先して行っている。後輩たちは、僕たちのそう行った姿をきちんと見てきているから、僕らがいなくなっても、大丈夫です」
 松山工は、選手権を最終的に悔し涙で終えた。だが、50年ぶりの偉業を達成したことに変わりはない。そして、彼らがこの舞台にたどり着くまでの道のりで手にしたモノは決して少なくはなかったはずだ。そして、それは、また次の世代へと受け継がれていく。この日のキャプテンの姿と、口にした言葉がそれを物語っていた。
【了】
城福達也●文 text by Tatsuya Jofuku
サッカーマガジンゾーン編集部●写真 photo by Soccer Magazine ZONE

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