中京大中京の監督と主将の絆が紡いだ10分間 高校サッカーに磨かれた“誇りと財産”

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覚悟した代償

 高校サッカーが見せる清々しさや、熱い思いが凝縮された10分間だった。3日、第94回全国高校サッカー選手権の3回戦が行われ、中京大中京高(愛知)は、前回王者の星稜高(石川)に0-1で敗れて姿を消すことになった。1点ビハインドの後半30分、中京大中京高の岡山哲也監督は、チームキャプテンのMF石川将暉を投入した。
 チームの中心選手がベンチスタートだったことには、原因がある。12月上旬に左足ハムストリングの肉離れを起こした石川は、大会直前にも再発。10分程度の時間限定でのプレーが限界だったからだ。岡山監督は「最後は託す思いで」石川をピッチに送り込んだ。2回戦までの2試合と、この試合でキャプテンマークを巻いた副主将のMF辻星哉は、石川の腕に主将の象徴を巻きつけた。
 12月上旬、石川には悲鳴を上げそうな左足を酷使してでもプレーをしなければいけない理由があった。チームが東海プリンスリーグの残留争いに巻き込まれ、最後までその座を安泰にできていなかったからだ。
「最初の肉離れの前に、トレーナーさんに『今やったら選手権は無理だぞ』と言われたんです。それでも、東海プリンスリーグをどうしても降格させたくなかった。後輩にも高いレベルで、プレミアを目指してやっていける場所を残すことが責任だと思っていたんです。その上で、自分たちの代で降格させるわけにいかないと、覚悟の上で監督に出場の意志を伝えました」
 チームは、プリンスリーグ東海への残留を果たした。しかし、その代償は重く、残念ながら石川の左足はその負荷に耐えることができなかった。彼は、高校最後の選手権で2回戦までをベンチで過ごし、ラストゲームとなったこの星稜戦も10分間のみの出場に終わった。それでも、後悔は全くないという。
「出られなくてもおかしくないという気持ちがありました。でも、監督やトレーナーさんがサポートしてくれて、そのおかげで10分間でも後悔なくプレーさせてもらえる機会を得た。いろいろな人の思いを背負って、責任のある中京大中京のキャプテンができたことは、自分を誇りに思うし、一生の財産です。胸を張って帰ることができる」

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