ひたむきな努力の末に

　このロングスローは、苦手を克服しようとして手に入れた武器だ。小学生のころに、ファウルスローばかりをしていたことを怒られ、練習を外された苦い経験が今につながった。一人練習を繰り返すうちに、気付けばスローインが誰にも負けないストロングポイントとなっていた。

　そうしたひたむきな努力が実を結び、全国の舞台でも圧倒的な存在感を放っている。さらに、原山はPK戦では5人目のキッカーとして登場。ゴール左へ落ち着いて決めて、勝利を決定づけた。この試合のヒーローとなった男は、「気持ち良かった。（GKの廣末）陸が止めてくれていたので楽な気持ちで臨めた」と振り返った。

　この日、試合会場となったニッパツ三ツ沢球技場は、立ち見客が出るほどの大観衆が詰めかけた。ベスト8進出を決めた青森山田は、準々決勝で2年前の王者・富山第一高校（富山）と対戦する。準々決勝でも、原山の度肝を抜くロングスロー目当てに多くの観衆が駆けつけることになるだろう。
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石川　遼●文　text by Ryo Ishikawa