日韓戦で露呈した森保Jの“中途半端さ” 二兎を追う姿勢は奏功せず…選手起用に疑問符も

日本代表を率いている森保監督【写真:Yukihito Taguchi】
日本代表を率いている森保監督【写真:Yukihito Taguchi】

「東京五輪に向けた競争」に覚えた違和感 中途半端に映った日本のスタンス

 メンタリティーの部分でも、気になる部分はあった。大会中の選手たちから「東京五輪に向けた競争」という趣旨の言葉が何度か聞かれたことだ。五輪世代の選手たちは常に競争の中に身を置いているという意味では、決して間違いではない。ただ、E-1選手権はあくまでA代表としてタイトルを争う大会であり、A代表に生き残ることが先に出てこない点には違和感を覚えた。

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 断っておきたいのは、選手たちに否があるのではないということ。今大会は23人中14人が五輪代表世代であり、システムもU-22代表で採用されてきた3-4-2-1。実情としてベースにあったのは、確かに東京五輪に向けたチームだった。それでもA代表の肩書きを背負って戦う以上は、その意識を植え付けるのが指揮官の役割だろう。

 こうした精神面がどれだけ韓国戦の勝敗に影響したかは測りようがないが、韓国の選手たちが“日韓戦”というだけでなく、A代表への生き残りを懸けて死力を尽くしていたことはピッチ上からも伝わってきた。

 例えば、左ウイングで先発フル出場したナ・サンホ(FC東京)は、大会前の時点で国内での評価が芳しくなかったという。そんななか、日本戦では陸上競技場のスタンド上段にも届くような闘志を見せ続けた。カウンターではドリブル、フリーランニングを問わず推進力を90分にわたって発揮し、日本がカウンターに出ようとすれば帰陣も怠らない。試合終了のホイッスルが鳴ると同時にピッチに倒れ込んだが、そのプレーぶりを見れば納得だ。

 今大会に対する日本のスタンスは、総じて“中途半端”に映った。大量の(A代表にとっては)新戦力を招集し、1戦目と2戦目でパフォーマンスを見極めたはずが、最終戦の韓国戦では負傷離脱した橋本拳人(FC東京)以外は初戦と同じメンバー。何よりもタイトルを優先するのなら、“代役”には経験のある大島僚太(川崎フロンターレ)という選択肢もあるなかで、五輪世代の田中碧(川崎)を先発起用し、最終的に後半途中から大島を投入している。まさに「二兎を追う者は一兎をも得ず」だった。

 ここまでW杯予選では順調に勝ち点を重ねており、東京五輪も開催国として出場が確約されている。日韓戦の完敗はショッキングだが、現実問題として致命傷とまでは言えない。ただ、貴重な強化の機会を一つ、有効活用できなかった事実は残る。ビッグトーナメントを迎えた時、今大会での戦いを悔やむような事態にならないことを願いたい。

(片村光博 / Mitsuhiro Katamura)



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