南野のリバプール移籍は決定的か 香川“恩師”クロップに質問、現地記者が確信する理由
会見前、筆者に釘を刺す広報官「監督は南野に関して話さない」
筆者のプレミアリーグ取材も今シーズンで19季目だが、決定前に広報からこれほどきっぱりと日本人選手の移籍を肯定されたことはなかった。
ただし、「会見ではまだ、監督は南野に関して話さない」と釘を刺された。
それは当然だ。広報がここまで言うのだから、移籍が実現する可能性は極めて高い。英メディアの報道通り、すでに両クラブが合意に達しているのは間違いない。
会見前に数人の地元記者に取材すると、今月末にも南野がメディカルチェックを受けにリバプール入りするはずだという。ということは、本人も個人条件で合意に達しているのだろう。後は契約書にサインをするだけ。現時点でも9割方、いやそれ以上に固まっているという印象だ。
しかしそこまで移籍が決定的な状況でも、クロップ本人が南野に対する興味を公に認めてしまえば、「あのクロップが欲しがる選手なら」と、直前で横槍を入れるビッグクラブも現れるかもしれない。けれども話せないと言われても、質問をぶつけてその時の相手の表情や仕草で真実を探ろうと試みるのが記者というものだ。質問者を指名して会見を仕切るマットには、「とにかくそれでも質問をさせてくれ」と伝えた。
果たしてクロップ本人は、南野にどれほどの興味を抱いているのだろうか。そんな想像に身を任せて、期待と不安の狭間で揺れながら、長身のドイツ人闘将を待った。クロップは会見開始予定時間の午後1時半きっかりに姿を現せた。
ところが、南野の質問をしようと身構えた筆者を横目に、「スカイ・スポーツ」のレポーターが「どの程度交渉が進んでいるのか? なぜ今、彼を獲得するのか?」と、会見の冒頭であっさり日本代表アタッカーの移籍について聞いてしまう。
クロップの答えはマットが予言した通り、つれないものだった。
「何も言うことはないよ。移籍についてだって? 何も言うべきではないだろう。ただし、南野が非常にいい選手だということは言える。でも、ザルツブルクには南野の他にも、いい選手がいるからね」
森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。