南野拓実の「警戒レベル」上昇 CL王者リバプール戦で異彩、秀逸だった“体の使い方”

南野拓実は世界最高DFといわれるファン・ダイクに対して臆することなくプレーした【写真:Getty Images】
南野拓実は世界最高DFといわれるファン・ダイクに対して臆することなくプレーした【写真:Getty Images】

CLの舞台に臆することなく「僕も全然やれるという手応えもあった」

 こうした南野の動きに対して、リバプールの選手は慎重に対応するようになっていく。興味深かったのは、後半9分のシーンだ。

 自陣からのロビングボールを、左サイドに流れながら追いかけていた南野は、走りながらチラッと振り返って背走してくるDFフィルジル・ファン・ダイクを確認していた。ボールを足もとに収めると、入れ替わるようにスペースに抜け出ようとしていたDFアンドレアス・ウルマーへのヒールパスを狙ったのだが、ファン・ダイクはこれにスッと足を伸ばしてカットした。

 南野が自分との距離感をしっかり確認したことから、次のプレー予測の選択肢を広げていた。優れたDFはこうした時に迂闊に飛び込まず、ヒールパスのほかにもトラップしてターン、あるいはボールをスルーさせるなど、より怖いプレーをさせないための優先順位を瞬時に作り上げる。後半、このプレー以外でも南野のプレーが抑え込まれる場面があったが、リバプールの選手はアプローチの段階でしっかりと修正してきていた。

 これは同時に、南野への“警戒レベル”が上がったからこその対応・修正だったと捉えられる。力任せにプレスをかけてもいなされたり、パスの出口を見つけられてしまうから、より慎重な守り方へと移行していた。

 加えて後半のザルツブルクは失点のショックもあったとはいえ、ダイナミックさが消えてしまったこともあり、リバプールに対して攻撃の形がなかなか作れなくなってしまう。前半であれば入っていたパスが通らない。一発勝負のプレーが多くなり、裏へ飛び出す動きばかりを見てしまい、中盤でフリーの南野が目に入らなくなる。チームとしても、そして南野個人としても、そうなった後どうするのかという宿題を持ち帰ることになった。

「CL出ているチームって、モチベーションとかにもよると思いますけど、そこまでそんな差はないと思う。僕も全然やれるという手応えもあった。でもどうですかね、そこでチャンスを決めて、アシストかゴールを残したら、そう言えたかもしれないですけど、結果は出せなかったんで。満足せず、やっていけたらいいなと思います。そういうレベルですし」

 自身のパフォーマンスについて、南野はそう答えた。やれたことはたくさんある。収穫は多い。でも、ここからさらに上へ行くためには、まだ足らないものがあることも見えてきた。

 次に向けて歩き出す――。CLでのプレーは、この6試合で終わりにするつもりはない。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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