南野拓実の「警戒レベル」上昇 CL王者リバプール戦で異彩、秀逸だった“体の使い方”
【現地発コラム】強豪リバプール相手にも球際で軸がブレず、トップ下でチャンス創出
日本代表MF南野拓実が所属するザルツブルクは現地時間10日、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)グループステージ最終節で昨季王者リバプールに果敢に立ち向かった。前半はほぼ互角の展開。前線からの激しいプレスは機能し、素早い攻撃で決定機を次々に作り出す。だが後半、冷静に得点チャンスを逃さずにゴールを重ねたリバプールが、最終的に2-0で勝利し決勝トーナメント進出を決めた。ザルツブルクは健闘及ばずグループEの3位となり、UEFAヨーロッパリーグ(EL)へ回ることになる。
「僕らが前半に1点取っていれば、まったく違う試合展開になっていたと思うし、もしかしたら僕らのエネルギーも後半まで続いたんじゃないかなと思います。後半で仕留めるか、前半で僕らが1点取るか……。ゲームプランは理想を言えばそうでしたけど、でもそれができなかったんで。それは相手のほうが強かったのかなと」
リバプール戦後、南野はそう試合を振り返った。
惜しいチャンスまでは持ち込むことができていただけに、そのどれかを決めることができていればと思わずにはいられない。前半をリードして折り返していてもおかしくないほどのパフォーマンスを、ザルツブルクは見せていたのだ。そしてその中でも、特に異彩を放っていたのが南野だった。
中盤ダイヤモンド型のトップ下でスタメン出場すると、すぐに攻撃のタクトを振るっていく。相手がマークに来られないスペースに顔を出し、フリーの南野を見つけると味方選手はすぐにボールを預けて走り出す。相手がボールを奪いにきても、全くボールを失わない。細かいボールタッチを繰り出すために、相手選手も迂闊に飛び込めないし、体をぶつけられても軸がぶれない。
何より体の使い方が素晴らしい。
以前は体重移動の際に少し踏み込みすぎてしまい、次の動作に移るまでに少なからずタイムロスがあった。そこで相手にぶつかられたりすると重心を崩し、つぶされる要因となるわけだが、今はこのあたりの体の使い方が非常にスムーズだ。一度浮き球の競り合いで、体を押さえつけてマイボールにしようとしたリバプール主将MFジョーダン・ヘンダーソンに対して、すっと体を入れ替えて落下点に入り込み、ボールをキープしてしまったシーンがあった。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。