「もっと動け!」 長谷部誠が攻撃陣を叱咤、払拭されない停滞感の理由とは?
過密日程により日々の練習で連係を深められない歯がゆさも…
長谷部は時折ボールを持って中盤まで運ぶが、前線の動きがないために攻撃の起点を上手く作れず、結局ボールを下げて作り直すという展開の繰り返しになってしまう。後半10分、たまらず両手を挙げて味方に「もっと動け!」とアピールする一幕もあった。
「相手も後ろに人数をかけていたんで、なかなか難しい面はあったんですけど。自分が持ち上がった時に、やっぱり真ん中とか相手の裏とか前の動きをもっと増やすと崩れてくると思うので、そこはもう少し要求してやっていかないといけないかなと思います」
後半43分に長谷部から前線に攻め上がっていたヒンターエッガーに、フワリとしたパスが通り、胸トラップからボレーというチャンスがあった。好機ではあったが、これをDF同士で作らなければならないのは寂しい限り。とはいえ、今季のフランクフルトには過密日程の影響により、日々の練習でコンビネーションを高める時間が取れないという歯がゆさもある。
「とにかく試合でやっていくしかない部分はある。今は大量得点できるチームではないので、攻撃ももちろん修正しないといけないんですが、守備の部分でも簡単に失点しないというところで突き詰めていかないと、なかなか勝ち点3は取れないかなと思います」
簡単な状況でないことは、選手もよく分かっている。やらなきゃいけないことが何かも分かっている。辛抱強く、一つひとつの試合を大事に取り組んで一丸となって乗り越えていく。その中心として長谷部の経験は、間違いなくチームにとって欠かせないものだ。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。