来季広島加入の四中工MF森島 彼が“高校サッカーに教わったモノ”
兄の変わっていく姿
「正直、メンバーに入るのも難しいだろうなと親と話していた」
しかし、彼が名古屋を離れたその年の第90回全国高校サッカー選手権で高3になった兄の大は、スタメンでこそなかったが途中出場でプレー。決勝戦のピッチにも立ち、準優勝に貢献した。
「準優勝のメンバーとなった兄はすごいと思った。四中工に入ってから、いつも僕が起きる前にはもう家にいなくて、厳しい練習をして、クタクタになって帰ってきた。そうした日々の中で兄がサッカーだけじゃなく、どんどん人間的にも成長をしていくのが分かった」
身近な存在である兄の努力と変化は、彼に大きな刺激を与えた。目指している柴崎に近づくためには地元の四中工でプレーし、高校サッカーを経験しなければいけない。その思いが一層強まった。
「人間として自立した兄を見て、僕も四中工に行けば、選手としても、一人の人間としても、絶対にもっと強くなれる。そう確信した」
念願かなって2013年、彼は四中工の門をたたいた。1年からレギュラーをつかんだが、毎日が必死だった。プリンスリーグ東海では苦戦が続き、思うようなサッカーができなかった。
「厳しい戦いが続いて、自分たちがポゼッションで支配できる試合が無くて、常に劣勢だった。自分もピッチに立っている以上、何とかしないといけないと思っていた」
結果、チームは県リーグ降格という憂き目に遭った。それまで曇りなく突き進んできた森島だったが、初めて立ち止まって歩いてきた道を振り返った。
「練習はキツいし、結果も出ない。正直、ユースの方が良かったんじゃないかなと思うこともあった」
だが、つらい事ばかりではなかった。よりどころにしてきた舞台へとたどり着いたのだ。
「僕らには選手権がある。選手権があるからこそ頑張ることができた」
高1で念願の選手権出場を果たすと、チームは快進撃を続けて準決勝まで進出した。富山第一にPK負けを喫したが、1年生MFは高い技術と存在感を放ち、注目の存在となった。
しかし、高2の一年間は一度も全国に出られないで終わった。しかも、選手権予選では決勝で、自らのバックパスのミスから相手に先制点を献上した。このミスでパニック状態に陥った森島は、何もできないままチームの敗戦を迎えてしまった。
「自分のせいで負けてしまった。自分のふがいないプレーで、6年連続で続いていた選手権出場を途切れさせた。責任感のない行動をしてしまい、悔しさ以上に後悔しかなかった」