南米で戦う元Jリーガー、日本の“育成”評価も課題指摘 「今の子は冷めている感じがする」

南米から見ても、日本の若手の「技術力はかなり高くなってきている」

――南米でこのルールがあるのは、ペルーだけなのでしょうか?

「南米ではコロンビア、チリでも同様、若手を一定時間出場させなければならないルールがあるそうです。ただ、規定時間がペルーよりも緩く、このルールに縛られるほどではないのだそうです」

――日本の若手選手に対しては、どのような印象を持っていますか?

「成熟度が高い選手が増えたと思います。僕がペルーから柏に移籍した08年にDF酒井宏樹(現マルセイユ)が、翌09年にはFW工藤壮人(現レノファ山口)がユースから上がってきたんですが、彼らはトップの選手にも負けない技術をすでに持っていました。Jクラブのユースだけでなく、高校サッカーを見ていてもそう思います。冷静にプレーできるし、ミスを怖がらないでプレーできる選手が昔に比べて増えたと思いました。

 ボールタッチ、相手に仕掛けていく姿勢を見てもそう。僕らが高校生の時はフィジカル任せの戦術が多かったですが、最近の指導者はテクニックをちゃんと教えている。去年柏にいた時も、若手を見ていてそう思いましたし、選手としての技術力はかなり高くなってきていると思います。フィジカル、技術、メンタル、どれをとっても、トップに上がったらすぐにデビューできそうな選手が増えていますね」

――日本代表も上手く世代交代できています。

「そう思います。メンバーを見ても、今の代表で30代の選手は数人だけで、20代中盤の選手が中心ですよね。ちゃんと世代交代できていると思います。今は若い選手がどんどん海外に出て行って、いろんな国でプレーしています。そのなかには、代表にまだ選ばれていない選手もいる。でも、代表に入るために決まった道というのはないですし、どんなところでも活躍することが大事。

 今は若手でも日本で1年、安定して結果を残せば海外に行ける時代になりました。海外でプレーすれば、たとえそれがスペイン、イングランド、イタリアのようなトップレベルのリーグでなくても、オランダ、ベルギーなどでも環境が全然違うから、日本では感じることができない経験ができると思うんです」

――それは例えば、どんなことでしょうか?

「海外では熱狂的なファンがいるなかで、助っ人としてプレーしなければいけないというプレッシャーがあります。試合に負ければ翌日は街を歩けない。サポーターから結果を非難されたり、罵声を浴びせられたりすることも珍しくありません。僕もシエンシアーノでプレーしていた時は、ホームでリベルタドーレス杯の試合で負けた翌日、市場に買い物に行った家族が罵声を浴びせられ、悔しがっていたこともありました。もちろん、僕自身に対して言われる時も当然あります。日本だと私生活にまでは影響はないですが、海外だと家族にも関わってくる。

 でも、そういう環境で揉まれたほうが自覚も芽生えるし、もっとやらないといけないと思える。僕らが若手だった頃は海外でプレーしていたのは数人だけでしたし、海外は夢物語だったけど、今は欧州でプレーすることを目標にしている選手も多い。そして今後は、海外でステップアップして、一流のリーグでプレーするようになる選手がどんどん増えていくと思います。そういった選手が日本に戻ってJリーグで再びプレーすれば、日本のサッカー界にもその経験を還元できる。こういういいサイクルができつつあると思います」

page1 page2 page3

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング