現役引退の元Jリーガー、最愛の父が二度の失業と借金乗り越え支えた人生 「兄に頼み込んで…」

父は二度の失業を経験…「息子には内緒で兄にお金を借りた」

 父は息子2人に事情を話さなかった。ユース在籍時に寿人が「夏休みにオランダへサッカー留学したい」と切り出した時も、費用は約50万円。「パッと出せるお金はなかった」。再就職先はスーパーの正社員。給料は前職の3分の2ほどで苦労した。

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「でも、息子たちにそんな姿は見せられない。息子には内緒で(政人さんの)兄に頼み込んでお金を借りました」

 2人がサッカーを続けられるように――。二度の失業で絶望の淵に立たされても、親戚中に頭を下げ、なんとか家計をやりくりした。「2人の好きな服を買うお小遣いも渡せない」。それでも、ただボールを追って欲しかった。

 父が二度目の失業の事実を伝えたのは、2人がプロ入りしてから。もちろん、息子たちは知らなかった。自分が送ってきたサッカー人生、こんなにも支えられていたとようやく気付いた。だが、2014年6月のこと。父が大腸がんを発症した。勇人は病院に何度も通い、寿人も広島から飛んできた。2人を支え続けた父の弱った姿。もう一度、喜ばせるため――。2人ができることは、ピッチに立ち続けることだった。

 勇人が歩んだプロ20年間の時間。心身ともにボロボロになるまで、戦い続けた。それでも楽しかった日々。政人さんは現役引退のリリースが発表される直前に、電話で一言聞いた。

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