現役引退の元Jリーガー、最愛の父が二度の失業と借金乗り越え支えた人生 「兄に頼み込んで…」
J2千葉MF佐藤勇人が現役ラストマッチ 父・政人、弟・寿人とともに歩んだサッカー人生
J2ジェフユナイテッド千葉の元日本代表MF佐藤勇人が10月13日、現役引退を発表した。千葉の下部組織で育ったレジェンド。今季、双子の弟・寿人が名古屋グランパスから加入し、再び同じピッチに立つことができた。寿人をはじめ、いつも家族に支えられてきた勇人のサッカー人生。本拠地フクダ電子アリーナで行われる24日のJ2最終節・栃木SC戦で区切りをつける勇人の物語を今、振り返る――。
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1982年3月12日、佐藤家に勇人と寿人の双子が誕生した。仲良くすくすく育った2人が幼稚園の時のこと。埼玉県春日部市にある駅から徒歩10分ほどの場所で、父はラーメン店を始めた。一番人気のしょうゆラーメンを目当てに、お昼時はサラリーマンで賑わった。毎日のラーメン作りで床は油まみれ。汗水流して息子のために働いた。
一度目の転機は勇人と寿人が小学6年になった時。市原(現・千葉)のジュニアユース入団が決定した。父は、愛着ある店を手放して、一家で千葉県八千代市に引っ越すことを決意。なぜか――。父の思いは一つだけだった。
「息子たちに懸けていたわけではない。ただ試合を見たり、応援したかった」
住んでいたマンションとラーメン店を売り払って、30坪2階建て庭付きの一軒家を購入した。2人は庭や駐車場でボールを追った。その嬉しそうな顔を見ると、新しい仕事のやる気も出た。だが、振り返ると思うことがあった。
「団地にしておけば、貯金ができたのに……」
千葉に引っ越した後、政人さんは食品を扱うバイヤーとなるためにある企業へと転職した。慣れない職でも家族のため。だが、勇人らが高校生となり、ユースへ昇格した頃だった。会社の社長が資金を持ち逃げし、あえなく倒産した。予想もしない出来事が起き、真っ先に2人の子供のことを考えた。
「まさか。目の前が真っ暗になる感じ。自分の夢でもあったので。一番お金がかかる時期に一気に家計が苦しくなった。双子なのでかかるお金も2倍で……」