来季湘南加入の青森山田MF神谷が高校サッカーを選んだ理由 “思うがままに生きる覚悟”

自問自答の末に

 ユース昇格1年目は順風満帆だった。チームで出場機会をつかみ、東京都開催の国体でも東京選抜のエースとして優勝に貢献するなど、充実した時を過ごした。
 しかし、高2になると状況が変わった。「チームを引っ張りたい」と決意を持って臨んだが、思うように結果が出せず、先発からも外れるようになってしまった。スタメンで出ても途中交代になるなど、ふがいない日々が続いた。
「何が足りないのか? 自問自答ばかりしていた」
 苦悩の日々の中、高円宮杯プレミアリーグEAST第7節であの青森山田と対戦した。この試合は、スタメン出場を果たすも、後半開始13分に交代を告げられ、ベンチへと退いた。1-1のこう着状態が続いた後半39分に東京Vユースが勝ち越すと、直後に相手選手が退場。10人になった青森山田は一気にバタつき始めた。すると、それまで沈黙していた青森山田の黒田剛監督が叫んだ。
「これでいいのか? 今まで自分たちがやって来たことをもう一度考えろ!」
 次の瞬間、崩れかかっていた青森山田は息を吹き返し、一気に反撃に転じた。試合は東京Vユースが勝利を収めたが、この時の光景が脳裏から離れなかった。
 自分に足りないものが分かった気がした。すぐ熱くなる性格が故に、ピッチで自らを制御できずにいた。それがプレーに波を生み、先発定着を難しくしていた。一方で、青森山田は黒田監督の一声で平常心を取り戻し、再び闘争心に火を付けた。この時、昔見せてもらった『雪上サッカー』の画像がフラッシュバックした。
「あの中でやりたいと思った。黒田監督の下で、柴崎選手のように厳しい環境に身を置いてもう一度自分を見つめ直したい」
 心の奥底にあったものが大きく動き始めた。自らに残された高校生活はあと1年半。ここで決断しなければ、変化は望めない。
「プロに行くにはどの道へ進んだ方が良いのかを常に考えていた。高校の3年間で成長しないと、後が無いという気持ちだった」
 決意が固まるのに、時間は要さなかった。親に相談し、秋になると、クラブにもその意思を伝えた。そして、プレミアリーグEAST第16節の青森山田戦。アウェーで行われた試合後、彼は黒田監督の元に直接話をしに行った。
「僕は青森山田でサッカーをやりたい。厳しい環境で自分をもっと鍛えたいです」
 固い意志にほだされ、東京Vと青森山田が話し合った末に、今年1月からの転入が決まった。
「正直、精神的にきつい時期でした。でも、ヴェルディの中にも、『頑張ってこい。どこに行っても応援しているぞ』と言ってくれる人がいて、泣いたこともあった。親をはじめ、いろんな人に感謝している。この決断を下した以上、後戻りできない。中途半端では終われないと覚悟を決めた」

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