久保建英に送られた“スタンディングオベーション”の価値 スペイン人記者「最高のゲーム」
スペイン人記者も久保を絶賛、圧巻ミドルは「マジョルカに安らぎを与えた」
前々節のオサスナ戦(2-2)後、おそらく久保も含む今季の新加入選手の貢献度の低さに苦言を呈していたモレノ監督だったが、ビジャレアル戦後の記者会見では「久保が先発し、我々が勝利した最初のゲームとなった。彼は素晴らしい選手であるし、今後もさらに良くなっていくはずだ。でも成長するために落ち着きを与える必要がある。チームに貢献し、何度も攻守にわたってプレーに参加した。素晴らしいゲームをやってくれたよ」と手放しで大絶賛した。久保はそのハイパフォーマンスにより、モレノ監督から称賛の声を引き出すことに成功したのである。
この日の久保の活躍については、スペインメディアも高く評価した。全国的なスポーツ紙「AS」、「マルカ」とも久保について両チームで唯一となる最高の3点をつけ、久保が試合を決定づけるプレーをしたと強調していた。
試合後、スペインラジオ局「カデナ・セール」のアルベルト・エルナンド記者も、久保について「ボールを持った時は18歳という若さにもかかわらず、ラウール・アルビオルなどのようなベテラン選手たちと臆することなく対峙していた。チームの指揮を取り、ビジャレアルの選手たちの抗議を受けた最初のPKを誘発した。その後も頻繁にプレーに参加し、3点目のゴールはハーフタイム直後に失点を許し、苦しい時間を過ごしていたマジョルカに安らぎを与えるものとなった。ビジャレアル戦は間違いなく、久保にとって最高のゲームだったよ」と褒め称えた。
久保が素晴らしい評価を受けるのはおそらく、初先発のチャンスが与えられ、ポストに当てるシュートで名手GKヤン・オブラクを脅かした第6節アトレチコ・マドリード戦(0-2)以来だろう。
それ以降、1-0で金星を挙げた“所属元”のレアル・マドリード戦を含め、チームが素晴らしい瞬間を過ごしたなかでも上手く流れに乗れていない印象があった。しかし今回のビジャレアル戦で、久保は再び周囲に自らの才能やクオリティーを知らしめることとなった。
マジョルカはこの後、今シーズン3度目となる代表ウィークを挟み、22日にアウェーでレバンテと対戦する。U-22日本代表に招集されチームを離れている久保だが、ビジャレアル戦のパフォーマンスがモレノ監督の今後の采配にどのような影響を及ぼすかが非常に楽しみな一戦となる。
再び2週間近くチーム練習に参加できない不利な状況ではあるが、3試合連続のスタメン出場を果たすのか、それともサルバ・セビージャが復帰し、モレノ監督のお気に入りの選手たちが再び先発に名を連ねるのか。現在のマジョルカで久保が置かれている序列に、“革命”が起こることを期待したい。
高橋智行
たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。