無給、強盗被害、標高3000m超… 36歳元Jリーガー、過酷な南米で闘い手にしたものとは?

“昇格請負人”としてチームに歓喜をもたらせるだろうか【写真提供:ウニオン・ウアラル】
“昇格請負人”としてチームに歓喜をもたらせるだろうか【写真提供:ウニオン・ウアラル】

自宅前で強盗に遭っても…ペルーへの愛着は失われず 「40歳まではプレーしたい」

 2度目のペルーでの選手生活は文字どおり、主力の“助っ人”としてプレーする日々だった。14年から17年まで4年間、かつてプレーしたデポルティボ・ムニシパルに所属。07年に10得点を決め、リーグの最優秀外国人選手賞に輝いていた澤は古巣に復帰した際、サポーターからも「よく戻ってきてくれた」と温かく迎えられた。

 そして1年でチームを2部から1部に昇格させると、その後も3年間プレー。リマは治安が悪く、自宅前で強盗に拳銃を突き付けられ、娘のランドセルや財布を盗まれたこともあったが、それでも帰国しようと思ったことはなく「何年もプレーして、ここで最後までやって引退したいと思えるくらい愛着のあるチームでした」と振り返る。17年シーズンを終え、再び柏に戻る際には、空港まで見送りに来たサポーターたちから「いつでも戻ってこい!」と、拍手で送り出されたのだという。

 そして今年、3度目のペルー。ベテランの域に差しかかった澤は、ウアラルへの入団時にこう話した。

「先のことは分からないが、体が動くなら、40歳まではプレーしたい。汗をかいて必死にプレーしたい」

 その一方で、グラウンドを離れればペルー人の妻を持ち、2人の子供の良き父親でもある。義父からも「マサはカセーロ(家庭人)だからな。孫たちの面倒も見てくれるし、本当にいい父親だよ」と言われている。サッカー教室に通う息子が無邪気にプレーする姿を見て、「この年まで好きなサッカーだけをしていてお金がもらえる訳ですからね。本当にありがたいことですよね」と目を細める。

 今シーズンも残り1試合。すでに優勝の可能性はなく、勝てばプレーオフ進出に望みをつなぐことができ、1部昇格のためにはさらにそのプレーオフを勝ち上がらなければならない。目標達成のためにはまだ長い道のりとなるが、澤は「若い選手たちに、1部昇格の喜びを味わわせてあげたい。これからプレッシャーのかかる試合が増えてくるが、経験の少ない選手たちが多いので、自分がムニシパルで1部に昇格した時の話をしたりして、自信を持ってプレーできるよう、持っている本来の力を発揮できるようにしてあげたい」と、先を見据える。プロ15年目。地球の裏側で現役を続けるベテランは、慣れ親しんだ異国の地で歓喜の雄叫びを上げる日を夢見て、ゴールを目指し続ける。

(福岡吉央 / Yoshiteru Fukuoka)



page1 page2 page3

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング