「FCメッシ」になったバルセロナ 極端な“守備軽減策”とカンテラ有望株への逆風

バジャドリード戦でメッシが躍動、ビダルとの関係性が新たな“共存のカギ”
バルセロナがようやく本格的に“開幕”した感があった。リーガ・エスパニョーラ第11節でバジャドリードに5-1と大勝。調整が遅れていたリオネル・メッシも2ゴール2アシストと、本調子に戻ったようだ。
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バルサはメッシとともに生きていかなければならない。シャビやアンドレス・イニエスタがいた頃はまだそうでもなかったが、現在のバルサはメッシがいるといないでは違うチームだ。その意味で、バルサは「FCメッシ」になってしまっている。
サッカーはチームゲームではあるけれども、あれほど巨大な才能を前にするとそうなってしまうのは仕方がない。アルフレッド・ディ・ステファノ、ヨハン・クライフ、ディエゴ・マラドーナを擁したチームもそうだった。
バルサの監督は、いかにメッシと共存するかに腐心してきた。エルネスト・バルベルデ監督は昨季、ついに4-4-2に手を出している。メッシを右のハーフスペース(ピッチを縦に5等分し両端と中央の間にあるエリア)付近で前を向かせること、守備負担を与えないこと、メッシの使用上の注意は主にこの二つだ。過去には“偽9番”、“偽7番”が使われたが、バルベルデは最もシンプルな解である4-4-2を使った。ただ、4-4-2はバルサの教義では異端と言っていい。
今季、バルベルデ監督は4-3-3に戻している。そして第11節で、メッシとの新しい共存のあり方を見つけた。
メッシ、ルイス・スアレス、アンス・ファティの3トップ、メッシは右ウイングである。MFはピボーテ(ボランチ)にセルヒオ・ブスケッツ、インテリオール(インサイドハーフ)左にフレンキー・デ・ヨング、右にアルトゥーロ・ビダル。メッシとビダルの関係性が新しい共存のカギだ。
メッシは例によって主に右のハーフスペースから発進するが、プレースタイルは少し変化している。以前ならドリブルでカットインしていく場面でも、パスで味方を使うことが多くなった。独力で数人をかわしてゴールを重ねてきたスーパースターでも、30歳を超えればスタイルは変化する。ペレ、クライフ、マラドーナもそうだった。
クライフは自分の後継者だと考えていたマルコ・ファン・バステンが30歳に差しかかった時、「これからは中盤寄りにシフトしていくだろう」と予言していた。ファン・バステンは負傷のために30歳で引退してしまい、予言どおりにはならなかったが、そうしたプレースタイルの変化は自然なことなのだろう。
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西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。