フィッカデンティ監督の戦術が浸透し始めたFC東京 高橋秀人も「ギリギリの感覚を楽しめるようになった」
「スリリングな展開だったが、そのギリギリの感覚を楽しむことができるようになった。そうした守備の醍醐味が少し分かるようになったのかもしれない」
東京は、今季からJリーグ初のイタリア人指揮官であるフィッカデンティ監督を招聘した。昨季までの奔放なパスサッカーから、組織的で堅実に試合をコントロールするスタイルへと舵を切ったのだ。
ブラジルワールドカップの中断明け以降のリーグ戦では、1-1、1-0と接戦の中、勝ち点を拾ってきた。高橋はその要因について「チーム全体が無失点で抑えようという意識が高い」と語った。
その言葉どおり、いまの東京は、前線から最後尾までが絶えず有機的に動き続ける。ボールホルダーへのアプローチも「ただ寄せるだけ」ではなく、「奪いきるため」のモノへと変わった。1対1の場面をつくらせないように、それぞれがきめの細かいポジションチェンジも欠かさない。まだまだ攻撃の課題は残されているが、そうした細部にわたる約束事がしっかりと守られるようになってきた。堅実なイタリア人の本質は、確かにチームに組み込まれつつある。
残すは、本国でニュージェネレーションと呼ばれる指揮官の攻撃性をいかにその上に積み上げられるかだろう。アルデンテにゆで上がったパスタをおいしくさせるのは、やはりソースが決め手だ。フィッカデンティ監督は「まだチームをつくりあげている段階。着実に一歩ずつ1センチずつでも歩みを続けていきたい」という。職人かたぎのシェフは、至高の一皿を完成させるため、根気強くその仕事を進めている。
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サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web
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