強いだけでは満足できない? 「ブランド力」求む名門、“カルト的”監督に託す未来
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劇的に変わったイタリア王者ユベントス、サッリ監督の下で“進化”を果たせるか
監督によってプレーは変わる。そんなに変わっていいのだろうかと思ってしまうが、選手が同じでも監督が代わればプレーは変わる。
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ユベントスは今季からマウリツィオ・サッリ監督が指揮を執っている。前任のマッシミリアーノ・アッレグリ監督は5シーズンでセリエAを5連覇、コッパ・イタリア優勝4回と文句なしの成績だった。国内では圧倒的に強かったのだが、首脳陣はどうやら強いだけでは満足できなくなったようだ。
ユーベは近年、エンブレムやユニフォームのデザインを一新するなど、クラブのイメージ戦略を推し進めている。アッレグリの後任リストにはジョゼップ・グアルディオラ(マンチェスター・シティ監督)も入っていたようで、魅力的なスタイルを構築したいと考えていたのだろう。サッリは確かに、“それ用”の監督ではある。長い下積みを経て、ナポリで美しいパスワークを開花させた。チェルシーでは不発に終わったが、名門ユベントスでの采配が注目されている。
それにしても、である。ユーベのプレースタイルはかなり変化した。
攻撃が狭い。ペナルティーエリアの幅から出てはいけないとでも言われているのか、中央に人が集まっている。サイドバックに転身したフアン・クアドラードだけがタッチライン際にいるが、あとはおおよそ中央にいる。人が中央なのでパスも中央でつないでいる。ナポリ、チェルシーでもショートパスをつないでいくスタイルだったが、ここまで中央に偏っていなかった。
サッリ監督にはなんらかの考えがあるのだろうが、選手は新加入のマタイス・デ・リフト以外変わっていないのに、サッカーが変わりすぎだ。変わった結果、何か素晴らしいことが起きているかというと、そうでもない。そのうち驚くような進化があるのかもしれないが、今のところ兆しは見られない。
グアルディオラもユルゲン・クロップ(リバプール監督)も、チームを一変させて自らの刻印を押す。誰のチームなのかが一目瞭然のスタイルを植え付ける。それで勝つから名監督なのだろう。監督次第でチームが劇的に進化するのは、ちょっと気味が悪いところもあるが、それができる監督のチームは「ブランド」を確立できる。
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西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。