「牽引車の轍~クラブリーダーのバイオグラフィー~」vol.5 川森敬史(アビスパ福岡・代表取締役社長) 人生で学んだ気くばりの本質
初めて知った、ピュアな思い
父が体調を崩して会社をたたむことになり、訪問販売の会社を経て1991年に地域の不動産業会社に入社しました。それが、現在まで続く道の入り口と言えます。まだアパマンショップは存在しない時代でした。
前述の大村社長との縁がきっかけで現職に就くことになるわけですが、私はサッカーについては素人同然でも、企業経営については多少なりとも経験があります。その経験値から、まずはサポーターミーティングに出席しようと考えました。どんな企業でもお客様の声は非常に大切だからです。
正直に言うと、コアなサポーターには少し怖い印象を持っていたのですが、実際に話してみると彼らのなんとピュアなことか。純粋にアビスパを20年、それこそ戦績に関係なく手弁当で応援し続けてくれている。企業人の感覚からすると、それほどのファンは通常の企業にはいないですよ。「こんなにありがたい人たちを大事にせず誰を大事にするのか」と、心底思いました。彼らを前にして「信頼してください」「必ずやります」なんて言葉は陳腐でしかない。もう何も言わずに、できることからスピード感を持ってやっていくしかないと、腹をくくりました。