“ブレイクスルーの瞬間”はすぐそこに… 鎌田大地、危機感を感じながら積み上げる自信
ブレーメン戦で3度の決定機を生かせず これだけゴールを奪えないのは「プロで初めて」
2-2で引き分けた6日のブンデスリーガ第7節ブレーメン戦で、3度の決定機を得ながら決めきれなかったフランクフルトの日本代表FW鎌田大地。こうした試合展開の場合、「鎌田、得点機を生かせず」「ゴールならず」という見出しで記事にされがちだ。
確かに、どれも惜しいチャンスだった。本人が、「チップで浮かすことも考えましたけど、普通にシュートを打って。今はこう僕自身にもツキがないなと思いますし、これだけチャンスがあって入れられないシーズンは、僕自身もプロで初めて。本当に少しずつ、頭の部分、気持ちの部分だと思うので、少しずつ良くしていかないとダメなのかなと思います」と振り返るように、チャンスに何度絡んでも、シュートを何度打っても、なかなかネットを揺らせない状況に今はいる。
ただ、だからといって鎌田のプレーが悪く評価されるということではない。ドイツ紙「ビルト」では、「ゴールこそまだ奪えていないが、それ以外のプレーでは素晴らしいプレーを披露している」と高評価が与えられている。また、アディ・ヒュッター監督が「今日は一方通行のサッカーだったのではないか」と語ったほど、この日のフランクフルトは立ち上がりから主導権を握り続けた。特にサイドで攻撃の起点を作るまでの展開が非常にスムーズで、そのあたりには鎌田も手応えを感じていた。
「チームの戦術、上手くサイド攻撃というか、狙っていた部分ができていた。守備面も失点以外は上手くプレスもかけていて、あまり危ないシーンがなかった。チームとして、いい試合はできていたと思います」
この日記録したクロスの数は35本。とはいえ、ブレーメンがセンターの守備を固めていたため、ただ放り込んでも跳ね返されるだけ。だからこそ、サイドで一つズレを生み出すプレーが重要になってくる。鎌田は味方が右サイドで起点を作った時に、スルスルッとペナルティーエリアの角周辺にできたスペースに入り込み、何度もチャンスシーンを作り出していた。
「あれは毎試合やろうと思っています。左は(フィリップ・)コスティッチが1人でできちゃうので、左に重きを置かず、右脇を助けるという形で、いつも右脇の時は走るようにしています」
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。