南野拓実は「システム変更で生き返った」 王者リバプールを惑わした“足の強さ”と守備力
CLリバプール戦で1得点1アシスト、トップ下に移行してから攻撃面で躍動
UEFAチャンピオンズリーグ(CL)の第2節、ザルツブルクはリバプールのホームに乗り込んで0-3から3-3に追いつく粘りを見せた。最後はリバプールFWモハメド・サラーに決められて3-4で敗れたが、ディフェンディングチャンピオンを相手に、しかもアンフィールドでこの内容と結果は大健闘と言っていいだろう。
立ち上がりはリバプールの猛攻になす術なく、3点を連取されて完全に勝負あったかに思われた。
流れを変えたのは、ザルツブルクのシステム変更だ。フラット型の4-4-2からMFをダイヤモンド型に組んだ形に変えた。これが前半30分あたり。日本代表MF南野拓実が右サイドハーフからトップ下にポジションを移している。
ダイヤモンド型への変更は、リバプールの4-3-3に対してマークがはっきりするからだろう。待ち受けてゾーンの網に引っかけるやり方では、リバプールの勢いを止めることができなかったが、システム変更で守り方の焦点が明確になった。
このマッチアップではリバプールのサイドバックが空くが、そこにはサイドハーフのMFドミニク・ショボスライとMFエノック・ムウェプが横へスライドして抑える。リバプールのビルドアップは形状変化がないので、パスのルートを限定されると個で破るしかない。DFトレント・アレクサンダー=アーノルドとDFアンドリュー・ロバートソンの両サイドバックは個で破る力があるが、ザルツブルクも頑張って抑えるようになった。
このシステム変更で生き返ったのが南野である。右サイドハーフでは守備に忙殺されていたが、相手のアンカーであるMFファビーニョへのマークに注力すれば済むようになり、より攻撃にパワーを使えるようになった。後半に入ると左サイドからのクロスを右足のボレーで叩き込んで2-3と1点差に詰め寄り、さらに右サイドを突破してからのロークロスで、FWエルリング・ブラウト・ホランドの同点ゴールをアシストしている。
抑えたボレーシュートも見事だったが、DFフィルジル・ファン・ダイクをかわしてのクロスには、南野らしさが表れていたと思う。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。