独特の“技術論”でブラジル人選手も上達 風間氏ほどJFA技術委員長の適任者はいない
現状のJFA技術委員会は「技術」の発信力に乏しい
一方で気になるのが、日本サッカー協会(JFA)の技術委員会から「技術」についての興味を引く発信が乏しいことだ。現在の技術委員会は、強化委員会から名称を変えたもので、むしろ中味を見れば上から6項目まで日本代表の監督候補者の推薦や強化、あるいは育成や普及などが続き、ようやく7番目に「強化方針に基づく技術指導」が記されている。要するに技術委員会と名称を変えても、内容は強化委員会を引き継いでいる。
しかし日本が成長していく上で、どんな技術を身につけていくべきなのかは、極めて重要なテーマだ。
例えば日本の現場では、概ね子供たちにも「右足も左足も使えるように」と指導をしているが、現実的に世界のトップレベルの大半は厳しい局面ほど利き足1本でプレーをしている。一見、両足自在なアンドレス・イニエスタでも、複数の選手に囲まれれば右足だけですり抜けていく。逆に日本の選手が国際舞台に出て行くと、せっかくレフティーという特徴を持っているのに、追い込まれると右足に逃げて奪われるシーンが目につく。
どちらが良いのか結論づけるのは難しいかもしれない。しかしJFAにとって、こうした重要な技術について検証に基づき議論を詰め、方向性を示していくのは急務である。そのためには、やはり本来の意味での技術委員会が必要で、責任者には技術を繊細に語れる能力が要る。そして今の日本を見渡せば、風間氏以上の適任者が存在するとは思えない。
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(加部 究 / Kiwamu Kabe)
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。