長谷部誠、ドイツでも際立つ冷静な思考 「自分たちへの信頼」が土壇場の同点劇を導く

「引き分けですけど、また前を向いてやっていける」

「今日はキャプテン(アブラハム)が出ていなかったので、僕がキャプテンマークを巻いてやりましたけど、若い選手が多いので、とにかく声を出して“やろう”というのは話していた」

 連敗中はどうしても、チームの雰囲気が悪くなりがちだ。そんな時に大事なのは自分たちへの信頼――その点を長谷部も強調する。

「アーセナルとの試合自体もすごい悪かったわけじゃなくて、自分たちもかなりチャンスを作っていたし、こっちでいう“最後の決意”みたいなのが欠けていたので、そこをもっと求めてやろうと話していた。失点シーンなんかは、まだまだ修正しなきゃいけないところですけど、新しいチームでかなり選手が新しくなったので、監督が言っているのはとにかく『我慢』と『続けること』と『成長を止めないこと』。それと自分たちのこの自信を絶対に失わないというのは、今週2連敗していたなかでも言われていた。今日(結果は)引き分けですけど、また前を向いてやっていけるんじゃないかなと思います」

 我慢強くといっても、そこでなんらかの手応えや結果が伴わないと、特に若手選手は不安に感じてしまう。だからこそ、この日の引き分けはフランクフルトにとって大きな価値のあるものだった。そしてこの勝ち点を無駄にしないことも重要だ。

「最低限の結果が取れたので、この勝ち点1を次につなげるために、次のウニオン・ベルリン戦で勝ち点3を取らなければならない。次の試合、すごく大事になると思います」

 次節勝利すれば、ブンデスリーガ6試合で勝ち点10。ELとの過密日程を戦っていることを考えれば、上々の成績と言えるものになる。リーグでも上位進出の可能性を常に残しておくために、勝つべき試合で勝ち切れるかどうかは間違いなく大切なポイントになる。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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