長谷部誠、ドイツでも際立つ冷静な思考 「自分たちへの信頼」が土壇場の同点劇を導く
公式戦2連敗だったフランクフルト ドルトムント戦は終了間際に追いつき2-2のドロー
ブンデスリーガではアウクスブルクに1-2で敗れ、UEFAヨーロッパリーグ(EL)ではアーセナルの前に0-3と屈した。公式戦連敗中でホームに強豪ドルトムントを迎えた22日の一戦、相手に1-2とリードを奪われながら土壇場に追いついての同点だっただけに、本拠地コメルツバンク・アレーナは勝ったかのような盛り上がりを見せていた。この日、スタメンから外れたDFダビド・アブラハムに代わりキャプテンマークを巻いてフル出場した元日本代表MF長谷部誠は、冷静に試合を振り返る。
「そうですね、2回追いつくという形でしたし、相手がドルトムントでしたので、勝ち点1を拾えて、まあ良しとしなければならない結果かなと。前半は自分たちが相手をリスペクトしすぎて、臆病な戦いになってしまった」
前半30分までは、大量失点をしてもおかしくない展開だった。フランクフルトは深めに守り、相手の攻撃を跳ね返そうというプランがあったはずだが、ドルトムントは易々と侵入してくる。何度もDFマッツ・フンメルスから一気にFWパコ・アルカセル、MFジェイドン・サンチョ、FWトルガン・アザールへダイレクトでパスが飛んでくる。守備のバランスを崩し、長谷部は何度も広大なスペースを駆け回り続けなければならなかった。
それでも前半30分過ぎから、少しずつフランクフルトが盛り返してくる。ボール保持者に対して積極的にプレスを仕掛け、パスの出しどころを限定していく。それまでドルトムントの攻撃についていくことができなかったが、徐々に自分たちの形でボールを奪えるようになってきた。
「若い選手が多いので、そうした選手たちが少しドルトムントという名前に、前半の最初30分くらい押されていたかなという感覚があった。途中から自分たちもやれるという感覚をみんなが得て、少し行けるようになった。やっていくなかで、なんかできるんじゃないかと。それが少しずつ、修正されていったのかなと」
そうした点からも、最後尾からチームを支える長谷部の存在は大きい。この試合でも厳しい局面ながら、最後のところで相手の突破やクロスを防いだり、相手の動きを読み切ったインターセプトで落ち着きをもたらしたりと、効果的なプレーを見せていた。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。