長谷部誠、ドイツで続く自問自答の日々 「チームが苦しい時、自分がどれだけやれるか」
EL初戦でプレミア強豪に0-3完敗、ホーム無敗記録も「16」でストップ
フランクフルトはUEFAヨーロッパリーグ(EL)のホームゲームで、抜群の力を発揮してきていた。昨季の準決勝ではプレミアリーグの強豪チェルシーにも1-1の引き分け。常に4万7000人の大声援をバックに、選手は最大限の力を出し切り、戦い抜いてきた。
だが、記録はいつか途絶えてしまう。今季のグループステージ初戦となったアーセナル戦を0-3で落とし、ホームでの無敗記録も「16」でストップした。
試合後、長谷部は「結果だけ見れば完敗でしたし、試合内容を見れば、もちろん自分たちにも大きなチャンスはあった」と振り返る。前半押し気味で試合を進めていたことを考えると、得点機をものにしていたら、また別の展開になったかもしれない。それだけに「1.5軍くらいの、ローテーションしながらって感じでしたけど、アーセナルは試合巧者だった。最後決めるって、点では相手のほうが間違いなく上だった」と、要所をしっかりと締めてきた相手のしたたかさを素直に認めていた。
クラブの代表取締役を務めるフレディ・ボビッチ氏は、この日チームが抱えていた問題点を指摘していた。
「ゲーム中の幸運が少しなかった。だが、このレベルではトップパフォーマンスを出せなければならない」
昨季のELの試合で、いつも見られていた飢餓感のようなものが少し欠けていたのだろうか。長谷部もその点について言及していた。昨季ファイナリストのアーセナルとの対戦に、チームとしての気負いみたいなものはあったのかという記者の質問に対して、「いや、特にはないですね。逆になんか、少しフワッと(試合に)入った感じがあった。そういうところは自分たちがもっと試合に気持ちを持っていく、もっともっと集中していかないとだと思うし、そのへんが足りなかったなって思いますけどね」と、ピシャリと答えていた。
この日もスタジアムは超満員、試合前のゴール裏には壮大なコレオが掲げられた。プレーオフを突破して辿り着いた欧州の舞台。だが、そんなファンの思いを受け止めてプレーするだけの心の準備が各選手にできていたのか。まだ若いから、あるいは新加入だから、という言葉だけで片づけるわけにはいかないところだ。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。