“速くて上手い”食野は「ハーツの希望」 英初ゴールに重なる若き日のルーニーの姿

不慣れな英国生活には「辛いし苦しいけど、さらに成長できるなって」

「インターナショナルブレーク中の練習、すごくきつくて(苦笑)。“わあ、やっぱ海外や”って(笑)。サッカーをやっている感じがあるぜ……というか、相手の体の大きさ、プレッシャーに慣れていく部分だとか、こっちのサッカーに対応するという意味では、まだ2週間なんで、もう少し時間が必要かなと思います」

 2012年7月にレンジャーズが破産して4部降格となって以来、セルティック1強の時代が続き、リーグとしての魅力が半減したことで資金難にも陥り、スコットランド・サッカーのクオリティー低下が指摘されて久しい。

 確かにボールを持ったプレーの質はプレミアリーグ(イングランド)、リーガ・エスパニョーラ(スペイン)、ブンデスリーガ(ドイツ)、セリエA(イタリア)といった欧州4大リーグとの比較で落ちる。しかし選手の体格、スピード、また英国サッカーの激しい当たり、そしてサッカーを国技として捉えるサポーターの熱気は、日本にいては体験できない。

 また、現在リバプールの押しも押されもせぬ守備の柱で、昨季のUEFAチャンピオンズリーグ制覇に貢献してバロンドールの有力候補にもなっているオランダ代表DFフィルジル・ファン・ダイクも、21歳でセルティックに入団。スコットランドで2シーズンを戦い、プレミアリーグのサウサンプトンを経てリバプールに移籍した。食野もこのオランダ代表DFが見せたホップ・ステップ・ジャンプの“3段跳び”の過程を参考にして、マンチェスター・シティへ凱旋という青写真を描けばいい。

 また世界の一流選手を目指す食野にとって、欧州サッカーを肌で体験することに加え、言葉や文化の壁を乗り越えることは不可避の課題だ。

「引っ越しもあったり、いろいろと自分の中で新しい生活にちょっとずつ慣れたりとか、みんなとも話をしながら、そういう(英語でコミュニケーションを取るという)意味でも、すごく有意義な2週間でした。でもやっぱりこっちに来て、生活面で上手くいかないこともあります。例えば、WI-FI一つをとっても、不在届けがあって郵便局に取りに行くとか、駐車場、どこに車停めていいか分からなかったり、頼んでいたものがちゃんと来ないとか、いろいろストレスもあります。でも、それも含めて楽しめるというか(笑)。

 この1カ月、誰にも助けを求められなかったんで。日本人、誰も周りにいないし、奥さんもいないし。辛いし苦しいけど、これでさらに成長できるなって。楽しんでやってます。ここは記事に書いてください(笑)」 

森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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