久保建英、マジョルカ本拠地に巻き起こした熱狂 地元記者も賛辞「クオリティーの高さ証明」

試合前の現地スタジアムの様子【写真:高橋智行】
試合前の現地スタジアムの様子【写真:高橋智行】

久保本人もチームへのフィットに手応え 「ボールも来るようになっている」

 久保のポジションは、バレンシア戦と同じ右サイドハーフだった。最初はボールが入らなかったが、相手からボールを奪い返すシーンもあり守備面での高い意識を見せつけた。そして時間の経過とともに、足もとにボールが入ると本領を発揮する。後半35分、レアル・ソシエダやエイバル、パリ・サンジェルマンでもプレーしていた経験豊富な左サイドバック、DFユーリ・ベルチチェ相手にペナルティーエリア内で1対1を仕掛けてPKを誘発。 小さくも力強いガッツポーズで奮い立つ久保に、スタジアム全体がこの日一番の沸き上がりを見せた。

 しかしキッカーを務めたFWアブドン・プラッツがPKを失敗。その瞬間、スタジアム全体が頭を抱える仕草を見せた。もしあのシュートが決まっていれば、この試合最大の功労者は間違いなく久保になっただろう。しかし久保は「僕はPKを蹴らなかったので何も言うことができない。ゴールを決める時も外す時もある」と、PKを失敗したチームメートを擁護した。

 先制点は叶わなかったが、その後、久保が観衆にとって最大の“娯楽”となった。久保はその期待に応えるように、後半アディショナルタイム7分、2人のDFと対峙して相手からファウルを引き出し、強豪相手に勝利する希望の光を再び与えた。

 マジョルカはそのFKから、FWアレックス・アレグリーアがヘディングシュートでゴールネットを揺らす。しかしこれはオフサイドで取り消され、試合はスコアレスドローで終了した。

 久保は試合後、「前回よりも長い時間プレーする機会を与えてもらい、その分チームメートのことも徐々に分かってきて、ボールも来るようになっているので、このまま信頼を勝ち取っていきたい」と、徐々にチームにフィットしていることを語った。

 また日本代表とマジョルカの両方で、右サイドハーフでプレーしていることについては、「そこが一番適しているかは分からないが、右サイドでも左でもトップ下でも、それぞれのチームの監督が決めたポジションでプレーするだけだし、どこでもできるのが自分の強み」と自信を窺わせた。

 スペイン紙「AS」は、この日の久保について「マジョルカを一歩前進させ、素晴らしいアクションでPKを誘発した」と高く評価し、2点(最高は3点)を付けた。同じくスペイン紙「マルカ」も、2点を付けて及第点を与えていた。

高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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