ドイツ代表、衝撃の「世代交代」宣言から半年 賛否を呼んだレーブ改革の行方は?
数年後を見据えるレーブ監督 「ドイツ代表は変革の真っ只中にいる」
上手くいかないと、こうした問題は再燃する。オランダ戦の敗戦を受けて、経験がまだ十分とは言えない守備陣にフンメルスが必要ではないかという話題が、また持ち上がってきた。ドルトムントのハンス=ヨアヒム・ヴァツケCEOは、「マッツが今季チームで好パフォーマンスを持続していけば、そのチャンスはあるのではないか」とメディアに語っていた。フンメルス自身も、まだ代表への復帰を熱望しているという。だが、その点を試合後に尋ねられたレーブは「そのことはすでに話したはずだ。ハンス=ヨアヒム・ヴァツケのコメントに対しては何も言うことがない」と、改めて現時点での決断を崩さないことを明かした。
現在のドイツ代表の最終ラインを支えるDFニクラス・ジューレ(バイエルン)は、「守備の問題には経験が足らないのでは?」とドイツ人記者に疑問を投げかけられても、「経験の問題ではない」と即答していた。まだ十分なパフォーマンスでないのは認めても、だからといって自分たちがダメなわけではない。
ドイツ代表の“現在地”について、レーブ監督は改めて「代表チームにかかる期待が、とてつもなく高いことは分かっている。だが、今ドイツ代表は変革の真っ只中にいることを忘れてはいけない。時間が必要だ。将来性のある選手が自分で経験を積み、プレッシャーと向き合い、チームとして成長していくプロセスが大事なのだ。彼らが成長していくことで、また世界の頂点に立つことができる。それだけの潜在能力があるのだ」と強調していた。
例えばドイツ最大のタレント、MFカイ・ハフェルツ(レバークーゼン)について、試合前にレーブ監督はこう語っていた。
「カイのポジションは、ここ数年で間違いなく代表チームででき上がってくるだろう。カイはこれからの代表に間違いなく必要な、大事な選手なのだ」
今すぐに、ではない。だが、辛抱強く戦い、勝利を積み重ね、貪欲さを取り戻し、ちょっとしたことでは動じない安定感をチームとして築き上げることができたら、そこにまた大きな変化を加えることができるはずだ。
そこまでの仕事を、レーブ監督は成し遂げなければならない。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。